潜水士の計算問題は、式の名前を覚えるだけでなく、何の圧力を、どの単位で使うかを確認すると解きやすくなります。「計算を全部捨てる」と決める前に、まず絶対圧への換算と短い式の代入から試してください。
計算問題の出題数は固定して公表されていません。したがって、計算を落とせば必ず不合格になるとは断定できません。科目ごとの得点を確認し、自分があと何点必要かを見ながら練習するのが実用的です。
配点と足切りを先に確認する
安全衛生技術試験協会の案内では、各科目10問、配点は次のとおりです。
| 科目 | 出題数 | 配点 |
|---|---|---|
| 潜水業務 | 10問 | 30点 |
| 送気、潜降及び浮上 | 10問 | 25点 |
| 高気圧障害 | 10問 | 25点 |
| 関係法令 | 10問 | 20点 |
合格には、各科目40%以上と合計60%以上の両方が必要です。たとえば潜水業務は12点、関係法令は8点が科目別の最低点になります。問題数だけの正答率と、配点を反映した得点は分けて集計してください。
試験時間は4時間なので、単純に40問で割ると1問あたり6分です。ただし読む時間や見直しも含む平均であり、全員に時間の余裕があることを保証する数字ではありません。通し演習で実際に計り、解ける計算を取りこぼさない配分を決めます。通常の案内は12:30〜16:30ですが、出張特別試験の開始時刻は地区ごとの案内を確認してください。
1. ゲージ圧と絶対圧を分ける
ゲージ圧は周囲の大気圧を基準とする圧力、絶対圧は真空を基準とする圧力です。
絶対圧=ゲージ圧+大気圧
水深10mにつき1気圧増加、大気圧を1気圧と近似する問題なら、水深20mのゲージ圧は2気圧、絶対圧は3気圧です。この近似を使うと次の表になります。
| 水深 | ゲージ圧 | 絶対圧 |
|---|---|---|
| 水面 | 0気圧 | 1気圧 |
| 10m | 1気圧 | 2気圧 |
| 20m | 2気圧 | 3気圧 |
| 30m | 3気圧 | 4気圧 |
「水深÷10+1」は、この近似条件での絶対圧の値です。海水・淡水の密度や大気圧の指定がある問題では、その条件を使います。「1気圧」と「0.1MPa」を常に厳密に等しい値として扱わないでください。
解き始める前に、問題文の圧力が絶対圧かゲージ圧かへ印を付けます。既に絶対圧として与えられている値に、もう一度大気圧を足す必要はありません。
2. ボイルの法則は絶対圧で代入する
同じ量の理想気体で温度が一定なら、圧力と体積の積は一定です。NASAのボイルの法則の解説でも、この条件を分けて示しています。
P₁V₁=P₂V₂
水面で1Lの気体を、前節の近似を用いて水深20mへ移すとします。温度変化や気体の出入りを考えない場合、次のように計算します。
- 水面の絶対圧:1気圧
- 水深20mの絶対圧:3気圧
- 1×1=3×V₂ → V₂=1/3L
圧力が3倍なら体積は1/3です。先にこの大小関係を予想しておけば、計算で3Lとなったときに掛け算と割り算の取り違えへ気付けます。これは試験用の気体モデルの計算で、人体の肺容積がそのまま同じ倍率で変わると断定するものではありません。
3. 分圧は全圧と気体の割合から求める
理想気体の混合ガスでは、各気体の分圧を次の式で計算します。
分圧=全圧×体積割合
全圧400kPa、酸素20%なら、400×0.20=80kPaです。20%を20のまま入れると100倍の誤りになるため、割合を小数に直してから代入します。全圧には絶対圧を用います。
酸素・窒素・ヘリウムだけの混合ガスで、全圧600kPa、酸素120kPa、ヘリウム180kPaなら、窒素は600−120−180=300kPaとなります。どちらか片方だけを引かないよう、含まれる気体を先に列挙してください。
厚生労働省の施行通達も、窒素以外の気体の分圧を全圧から差し引いて確認する方法を示しています。法令の分圧制限は濃度そのものの制限ではありません。同じ体積割合でも、全圧が変われば分圧が変わります。
4. 空気量を比較するときは換算先をそろえる
同じ温度で理想気体とみなし、周囲圧力下での呼吸量が毎分20L、水深30mでの絶対圧を4気圧とする例を考えます。水面の1気圧へ換算すると、20×4=毎分80Lです。
ここで比較しているのは、水面の圧力へ換算した空気の体積です。毎分20Lと毎分80Lを、同じ圧力下の値として比べてはいけません。
ボンベから取り出せる量を計算する場合も、終わりに残す圧力を含めた条件が必要です。温度一定・容積Vの理想化したボンベから、圧力をP開始からP終了へ下げて取り出す量を基準圧力P基準へ換算するなら、V×(P開始−P終了)÷P基準となります。同じ基準のゲージ圧どうしの差でも、絶対圧どうしの差でも差圧は同じです。
「容積×充塡圧力」だけでは単位がL・MPaなどになり、換算先の圧力で割る操作が欠けます。また「残圧」と書かれているだけで圧力の基準を決めつけず、問題文の指定を確認してください。試験の単純計算を、そのまま実際の潜水可能時間の計画に用いるものではありません。
計算の種類ごとに誤りを記録する
間違えた問題では、答えだけでなく次のどこでずれたかを残します。
| 確認する箇所 | よくある取り違え |
|---|---|
| 圧力の基準 | ゲージ圧をボイルの法則へそのまま代入する |
| 割合 | 20%を0.20へ直さない |
| 換算先 | 水面換算量と水深の圧力下の量を混ぜる |
| 単位 | MPaとkPa、Lとm³、分と時間を混ぜる |
| 式の条件 | 温度一定や使用する係数の条件を落とす |
予備空気槽の内容積や酸素ばく露量には、厚生労働省告示第457号の計算方法があります。すべてをボイルの法則だけで解くのではなく、設問が指定する式と単位を確認します。
200問の演習から計算と苦手科目を選ぶ
潜水士の練習問題では、4科目各50問、合計200問の問題本文と解説を公開しています。今回の追加には、予備空気槽の内容積、気体の分圧、酸素ばく露量の積算が含まれます。
まず式へ代入できる問題を解き、間違えた問題は上の表で原因を分類します。その後、科目ごとの得点を確認し、40%に近い科目の知識問題も一緒に補ってください。全体の使い方は予想問題200問の使い方、設備や携行物の条件は連絡員・送気・携行物の覚え方で整理しています。






