介護職員初任者研修は、介護の仕事の入口になる研修で、130時間・10科目の講義と演習と、1時間程度の筆記の修了評価で修了します。 介護保険法施行令と施行規則が定める介護員の養成研修の課程の一つで、修了すると訪問介護の訪問介護員として、入浴・排せつ・食事の介助などの身体介護を担えます。平成25年4月に、旧ホームヘルパー2級などの課程がこの研修に替わりました。
この記事では、初任者研修の位置づけ、130時間の中身、受講の条件と期間、修了するとできること、無料で受ける方法と費用を抑える制度、介護福祉士・実務者研修との関係を、法令と厚生労働省の案内で整理します。
結論: 介護職員初任者研修とは
- 何か: 介護保険法施行令第3条の介護員養成研修の課程の一つ(施行規則第22条の23)。実施するのは都道府県か、都道府県知事が指定した研修事業者。
- 中身: 講義と演習で130時間・10科目。別に1時間程度の筆記の修了評価。講義のうち最大40.5時間は通信学習で受けられる。
- 受講の条件: 国の通知が定める対象者は「介護の業務に従事しようとする者」など。年齢や学歴の条件は国の決まりには見当たらない。
- できること: 訪問介護の身体介護を担える。59時間の生活援助従事者研修では、生活援助が中心のサービスだけ。
- 費用を抑える方法: 求職中ならハロートレーニング(受講料無料・テキスト代等は自己負担)。雇用保険に入っている人と離職して1年以内の人は、教育訓練給付の指定講座。
- その先: 介護福祉士の実務者研修(450時間)は、初任者研修の修了者なら320時間。
初任者研修の位置づけ — 法令ではこうつながる
初任者研修は、訪問介護を担う人を養成する研修として、法令に次のように位置づけられています。
| 法令 | 定めていること |
|---|---|
| 介護保険法 第8条第2項 | 訪問介護は、「介護福祉士その他政令で定める者」が行う入浴、排せつ、食事等の介護など |
| 介護保険法施行令 第3条第1項 | 「政令で定める者」は、都道府県知事が行う研修か、知事が指定した事業者の研修(介護員養成研修)を修了し、証明書の交付を受けた者 |
| 介護保険法施行規則 第22条の23 | 研修の課程は「介護職員初任者研修課程及び生活援助従事者研修課程」。内容は厚生労働大臣が定める基準以上 |
| 厚生労働省告示(平成24年第71号) | 初任者研修は、別表第一の課程(130時間・10科目)で行う |
厚生労働省の「介護員養成研修の取扱細則」は、目的を、介護に携わる者が業務を遂行するうえで最低限の知識・技術とそれを実践する際の考え方のプロセスを身につけ、基本的な介護業務を行うことができるようにすること、としています。研修事業者の指定は都道府県ごとで、通信の課程のように、同じ事業者が複数の都道府県で一体的に行う事業は、本部などの所在地の都道府県が指定します。
130時間・10科目の中身
科目と時間は、告示の別表第一で決まっています。
| 科目 | 時間 | 通信学習で受けられる上限 |
|---|---|---|
| 1. 職務の理解 | 6時間 | 0時間 |
| 2. 介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 | 7.5時間 |
| 3. 介護の基本 | 6時間 | 3時間 |
| 4. 介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 | 7.5時間 |
| 5. 介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 | 3時間 |
| 6. 老化の理解 | 6時間 | 3時間 |
| 7. 認知症の理解 | 6時間 | 3時間 |
| 8. 障害の理解 | 3時間 | 1.5時間 |
| 9. こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 | 12時間 |
| 10. 振り返り | 4時間 | 0時間 |
| 合計 | 130時間 | 40.5時間 |
- 通信学習の上限は、取扱細則の別添4の表です。通信学習で受けられるのは最大40.5時間で、残りの89.5時間は通学(対面)で受けます。ただし、新型コロナのときに始まった臨時の取扱いで、都道府県の判断により修了評価を含めて全部を通信で行うことが、2027年3月31日まで認められています。
- 130時間とは別に、筆記試験による修了評価(1時間程度) があります。難しさは「列挙・概説・説明できるレベル」を想定しています(取扱細則)。
- 修了証は、科目9で介護技術の習得が講師に評価され、修了評価の結果が所定の水準を超えた受講者に出されます。
- 2027年4月からは、取扱細則の改正で、テレビ電話装置などを使う形や録画した動画を見る形も認められます。郵送の添削による通信学習の上限は40.5時間のままで、実技の演習や実習は対面で行います。
修了評価の問題数や合格の線は告示と取扱細則には定めが無く、都道府県の要綱と研修事業者が決めます。研修事業者は、修了評価の方法・評価者・再履修の基準を公表しています(取扱細則 別添5)。修了評価の形と練習問題は介護職員初任者研修の修了試験の練習問題の記事にまとめています。
受講の条件と期間
- 対象者: 取扱細則は、「訪問介護事業に従事しようとする者若しくは在宅・施設を問わず介護の業務に従事しようとする者」としています。年齢・学歴・実務経験の条件は、国の法令・告示・通知には見当たりません。研修事業者や自治体の事業が独自に条件を付けることはあります。
- 期間: 研修事業者の指定の基準は「修業年限は、おおむね八月以内」(施行規則第22条の27)です。最短の期間は告示・取扱細則・施行規則には見当たらず、講座ごとに違います。
- 費用・日程: 取扱細則は、研修事業者に、研修のスケジュール(期間・日程・時間数)、費用、修了評価の方法・評価者・再履修の基準などを公表させています。受ける講座のホームページで確かめます。
修了するとできること
いちばん大きいのは、訪問介護で身体介護を担えることです。厚生労働省の2026年6月の資料(社会保障審議会 介護給付費分科会)は、訪問介護員等に介護職員初任者研修修了者(130h)を挙げ、生活援助従事者研修修了者(59h)は「生活援助中心型のみ提供可能」としています。
| 項目 | 介護職員初任者研修 | 生活援助従事者研修 |
|---|---|---|
| 時間 | 130時間(10科目) | 59時間(9科目) |
| 筆記の修了評価 | 1時間程度 | 30分程度 |
| 修業年限(指定の基準) | おおむね8月以内 | おおむね4月以内 |
| 担える訪問介護 | 身体介護も | 生活援助が中心のサービスだけ |
特別養護老人ホームの運営基準は、資格の無い従業者に認知症介護の基礎的な研修を受けさせる措置を施設に義務づけていて、介護福祉士や初任者研修などの修了者はその対象から外れます(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第24条第3項)。施設の介護職員の求人で初任者研修の修了を条件にするかは事業所ごとに違うので、求人票で確かめてください。
旧ホームヘルパー2級との関係
平成25年4月1日に、訪問介護員の研修は介護職員初任者研修に替わりました。それまでの介護職員基礎研修・1級課程・2級課程(旧ホームヘルパー2級)を修了していた人は、初任者研修を修了した者とみなされます(平成24年厚生労働省令第25号の附則第2条)。3級課程の修了者は、みなしの対象ではなく、都道府県の判断で初任者研修の一部を免除できることになっています(取扱細則)。
無料で受ける方法と、費用を抑える制度
求職中なら — ハロートレーニング(公的職業訓練)
厚生労働省は、ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)を、仕事を探している人を対象にした無料の職業訓練制度としています(テキスト代等は自己負担)。受けるには、ハローワークで求職の申込みをして訓練に申し込み、面接や筆記試験などの選考に受かると、受講のあっせんを受けます。
- 離職者訓練: 主に雇用保険を受給している求職者が対象。都道府県が民間の教育訓練機関に委託するコースの中に、初任者研修を取れるものがあります。たとえば千葉県の委託訓練は「2か月又は3か月間の…介護職員初任者研修等の訓練」を挙げ、受講料は無料(テキスト代・健康診断料等は本人負担)としています。
- 求職者支援訓練: 主に雇用保険を受給できない求職者が対象。本人の収入が月8万円以下、世帯の収入が月30万円以下などの条件を満たすと、職業訓練受講給付金(職業訓練受講手当 月10万円と通所手当など)を受けながら受講できます。条件を満たさなくても、訓練は無料で受けられます。
コースがあるか、いつ募集するかは都道府県や時期で違います。ハローワークインターネットサービスで探せます。
雇用保険に入っている人・離職して1年以内の人なら — 教育訓練給付
雇用保険の教育訓練給付は、厚生労働大臣が指定した講座を修了すると、受講費用の一部が支給される制度です。厚生労働省のリーフレットは、一般教育訓練と特定一般教育訓練の両方の例に介護職員初任者研修を挙げています。
| 種類 | 支給される額 |
|---|---|
| 一般教育訓練 | 受講費用の20%(上限10万円) |
| 特定一般教育訓練 | 受講費用の40%(上限20万円)。令和6年10月1日以降に受講を始め、修了後1年以内に資格を取って就職などをした場合は、10%(上限5万円)が追加 |
- 対象になるかは 講座ごと に決まります。厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で、受けたい講座が指定を受けているかを確かめます。
- 受講を始める日に雇用保険に入っている人のほか、離職して1年以内の人も対象です(雇用保険法第60条の2第1項第2号。出産・育児・病気などで延長した場合は最大20年以内)。
- 雇用保険に入っていた期間などの条件があります(初めて受ける人は、当分の間、支給要件期間が1年以上。雇用保険法第60条の2・附則第11条)。
- 特定一般教育訓練は、受講を始める日の2週間前までに、ハローワークで訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認を受けます。済ませずに受講を始めると、40%の給付を受けられません。支給の申請は、修了した日の翌日から1か月以内です(厚生労働省のリーフレット)。
自治体の事業の例
自治体が独自に費用を支援している例もありますが、仕組みはそれぞれ違います。
- 東京都: 都内で介護業界への就労を希望する人などを対象に、無料の初任者研修の講座を開いています(原則として東京都福祉人材センターへの求職票の登録が要件。すでに介護施設で働いている人などは対象外)。
- 宮城県: 無資格の人を介護職員として雇う法人に、受講料(1人あたり上限6万7千円)などを補助しています。働きながら資格を取る形で、申請するのは雇う法人です。
住んでいる都道府県・市区町村の介護人材の担当のページで確かめます。
介護福祉士・実務者研修との関係
初任者研修は、介護福祉士への最初の段にもなります。
- 介護福祉士を実務経験で受けるには: 原則として、3年以上の介護等の業務と、実務者研修(450時間)の修了が必要です(社会福祉士及び介護福祉士法 第40条第2項第5号・同法施行規則 第21条第3号)。養成施設や福祉系高校の道では、実務者研修は要りません。
- 初任者研修の修了者は実務者研修が320時間: 厚生労働省の通知「実務者研修における『他研修等の修了認定』の留意点について」は、初任者研修の修了者について、実務者研修450時間のうち130時間分の科目(人間の尊厳と自立・社会の理解Ⅰ・介護の基本Ⅰ・生活支援技術Ⅰ・Ⅱ・介護過程Ⅰ・認知症の理解Ⅰ・障害の理解Ⅰ・こころとからだのしくみⅠ)の修了を認め、受ける時間を320時間としています。旧ホームヘルパー2級の修了者も同じ320時間です。
- 初任者研修の修了者が受ける残りの320時間には、介護過程Ⅱ・Ⅲや医療的ケアなどが入ります。介護過程Ⅱ・Ⅲと医療的ケアは、初任者研修では修了の認定の対象になりません。
例題: ぴよパスの初任者研修の問題から
ぴよパスのオリジナル予想問題から2問です(修了評価の問題ではありません)。
例題1(介護・福祉サービスの理解と医療との連携) 介護保険の訪問介護で、居宅サービス計画(ケアプラン)と訪問介護計画をそれぞれ作成する者について、正しいものを選ぶ問題です。
答え: 居宅サービス計画は介護支援専門員が作り、訪問介護計画はサービス提供責任者がその内容に沿って作る。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第24条は、訪問介護計画をサービス提供責任者が作り、居宅サービス計画があるときはその内容に沿って作ると定めています。 この問題を解く →
例題2(生活支援技術) 右片麻痺のある人が、いすに座って上着を着替えるときの介助として、最も適切なものを選ぶ問題です。
答え: 脱ぐときは左側(麻痺のない側)から脱いでもらい、着るときは右側の袖から通す。麻痺のない側から脱ぎ、麻痺のある側から着る「脱健着患」が基本です。本人ができる動作は自分で行ってもらいます。 この問題を解く →
修了評価の練習
ぴよパスの介護職員初任者研修の練習問題は、取扱細則の「修了時の評価ポイント」に沿った分野ごとの4択で、全問に解説があります。研修の途中の復習や、修了評価の前の確認に使えます。修了評価の形と、分野と研修の科目の対応は介護職員初任者研修の修了試験の練習問題の記事で説明しています。
まとめ
- 介護職員初任者研修は、介護保険法施行令第3条の介護員養成研修の課程の一つ。130時間・10科目と、1時間程度の筆記の修了評価。
- 通信学習は最大40.5時間で、残りは原則として通学(2027年3月までは、都道府県の判断で全部を通信にできる臨時の取扱いがある)。2027年4月からはテレビ電話装置や録画の動画も認められる。
- 修了すると、訪問介護の身体介護を担える。旧ホームヘルパー2級などの修了者は、初任者研修の修了者とみなされる。
- 求職中ならハロートレーニング(受講料無料・テキスト代等は自己負担)、雇用保険に入っている人と離職して1年以内の人は教育訓練給付の指定講座(20%または40%を支給。特定一般は受講の2週間前までに手続き)で費用を抑えられる。
- 介護福祉士の実務者研修(450時間)は、初任者研修の修了者なら320時間。
関連記事
出典
- 介護保険法 第8条第2項、介護保険法施行令 第3条、介護保険法施行規則 第22条の23〜第22条の28・附則(平成24年厚生労働省令第25号)、社会福祉士及び介護福祉士法 第40条第2項・同法施行規則 第21条、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第24条第3項、雇用保険法 第60条の2・附則第11条、雇用保険法施行規則 第101条の2の7・第101条の2の8(e-Gov法令検索・2026年10月20日に確認)
- 厚生労働省告示「介護保険法施行規則第二十二条の二十三第二項に規定する厚生労働大臣が定める基準」(平成24年第71号)
- 厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について(介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係)」(平成24年3月28日 老振発0328第9号の改正後全文。Ⅰ10 の通信学習等は2027年4月施行の文)、「介護員養成研修の取扱細則の一部改正について」(令和8年3月31日)
- 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 第259回(2026年6月29日)資料1「訪問介護」
- 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課長通知「実務者研修における『他研修等の修了認定』の留意点について」(平成23年11月4日 社援基発1104第1号の改正後全文。関東信越厚生局の掲載 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/jitsumusya_guideline_20180406.pdf )
- 厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」「ハロートレーニングとは」「求職者支援制度のご案内」「教育訓練給付金」、リーフレット「教育訓練給付金のご案内」、報道発表「特定一般教育訓練の指定講座を公表しました(令和8年10月1日付け指定)」
- 千葉県「離職者等再就職訓練(民間教育訓練機関等に委託する職業訓練)」、東京都福祉局「初任者研修等資格取得支援事業」とチラシ、宮城県「令和8年度介護職員初任者研修受講支援事業」(いずれも2026年10月20日に確認)








