「計算が出ると思うと手が止まる」——ビル管理士で計算を丸ごと捨てる人は少なくありません。でも、その多くが最大配点の空気環境の調整(45問)に集中していて、全部捨てると足切り(各科目40%)が一気に危うくなります。安心してほしいのは、ビル管の計算に高度な数学は不要だということ。出るのは数えるほどの「型」で、公式に当てはめる四則演算が中心です。
この記事は、頻出する計算を換気量・湿り空気・照度・BOD・騒音の型に分け、それぞれを数字入りの例題で「手順どおりに解く」流れだけに絞って解説します。公式の使い方さえ覚えれば、計算は捨てる範囲から得点源に変わります。
この記事で分かること
- ビル管の計算が「型」で解ける理由(高度な数学は不要)
- 必要換気量を公式1本で解く手順(例題つき)
- 湿り空気線図を「読むだけ」で答えを出す手順
- 照度・BOD除去率など、公式に当てはめるだけの計算(例題つき)
- 騒音(デシベル)の固定パターンと、計算でやりがちな失敗
独学の本命テキスト
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)対策の土台になる、解説と演習のバランスがよい定番テキストがこちらです。
※価格・評価は変動します。改訂年(2024年以降推奨)を商品ページで確認してください。上記は Amazon アソシエイトのリンクです。
解法1:必要換気量は「公式1本+単位そろえ」
必要換気量は、二酸化炭素濃度を基準にした次の式がほぼすべてです。まずこの1本を確実に。
必要換気量 Q(m³/h)= 室内のCO2発生量(m³/h)÷(室内許容濃度 − 外気濃度)
練習問題:在室者1人のCO2発生量が0.02m³/h、室内許容濃度1,000ppm、外気濃度350ppm のとき、1人あたりの必要換気量を求めよ。
- 濃度を小数(比)に直す:1,000ppm=0.001、350ppm=0.00035
- 公式へ代入:Q = 0.02 ÷(0.001 − 0.00035)= 0.02 ÷ 0.00065 ≒ 30.8m³/h
- 在室者が10人なら ×10 で約308m³/h
最大のミス源は単位です。ppmは「100万分の1」なので、必ず小数に直してから引き算します。関連で、換気回数 N(回/h)= 換気量 ÷ 室容積 も覚えておくと、回数⇄換気量の往復計算に対応できます。
解法2:湿り空気線図は「計算せず読む」
湿り空気線図(h-x線図)は試験当日に問題冊子へ示されるので、暗記ではなく「読み方」が勝負です。状態変化を向きでとらえます。
- 加熱=右へ(乾球温度↑/絶対湿度は不変)
- 冷却=左へ(露点を下回ると除湿が始まる)
- 加湿=上へ(絶対湿度↑)/ 除湿=下へ(絶対湿度↓)
- 2つの空気の混合=2点を結んだ線上に来る
手順:与えられた2点(状態)を線図にプロットし、絶対湿度・相対湿度・比エンタルピーを目盛りから読み取り、その差を答えにするだけ。たとえば「加熱コイルの加熱量」は、入口と出口の比エンタルピーの差 × 風量(質量流量)で求まります。計算というより「線図のどこを読むか」を間違えないことが得点の分かれ目です。
解法3:照度・BODは「定義式に当てはめる」
公式の意味さえ分かれば即答できる型です。代表例を2つ。
照度(逆2乗則):点光源からの距離が2倍になると、照度は2乗で小さくなる(1/4)。
練習問題:ある面の照度が400lxのとき、光源からの距離を2倍にすると照度はいくつか。
400 ÷ 2² = 400 ÷ 4 = 100lx
BOD除去率(排水処理):汚れがどれだけ減ったかの割合。
除去率(%)=(流入BOD − 流出BOD)÷ 流入BOD × 100
練習問題:流入BOD 200mg/L、流出BOD 20mg/L のとき除去率は何%か。
(200 − 20)÷ 200 × 100 = 180 ÷ 200 × 100 = 90%
どちらも「定義の式に数値を入れるだけ」です。照度は距離の2乗、除去率は(減った量÷もとの量)という意味を押さえれば暗記に頼らず解けます。
解法4:騒音(デシベル)は固定パターンで暗記
デシベルは対数なので単純な足し算ができません。出るのは決まったパターンだけです。
- 同じ大きさの音源が2台 → +3dB(2台で音エネルギーが2倍だが、音圧レベルでは+3dB)
- 点音源から距離が2倍 → 約6dB減少
- 2音の差が10dB以上 → 小さいほうは無視できる(合成しても大きいほうとほぼ同じ)
練習問題1:60dBの機械2台を同時運転すると何dBか。
60+3=63dB。「60+60=120dB」ではありません。
練習問題2:70dBと55dBが混在している場合、合成音圧レベルはおよそいくつか。
差が15dBなので、55dBは無視できる。合成しても約70dBと考えてよい。
「単純に足し算しない」と分かっていれば、引っかけ選択肢を外せます。
計算問題でやりがちな失敗
- 計算を最初から全部捨てる:換気量・線図・照度・BOD・騒音の型はどれも軽い。捨てると最大配点の空気環境で足切りに近づく
- 単位をそろえずに代入する:ppm⇄小数、mg/L、m³/h の換算ミスが最頻出。式に入れる前に単位を統一する
- 公式を直前に丸暗記する:意味(距離の2乗、減った割合、対数だから足せない)を理解しておくと、数字が変わっても解ける
まとめ:今日やる1手は「換気量の練習問題を1問解く」
ビル管の計算は、換気量・湿り空気・照度・BOD・騒音の少数の型に集約され、公式への当てはめと単位そろえで解けます。難しそうという思い込みを外し、型ごとに1問ずつ手を動かすのが上達の近道です。
次の一手は、解法1の換気量の例題を、数字を変えてもう1問自分で解いてみること。手順が身につけば計算は得点源になります。続けて 空気環境の調整対策 と 語呂合わせ で、関連する基準値や用語も固めておきましょう。
出典:
- 公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター — 建築物環境衛生管理技術者試験 受験案内
- 建築物衛生法 — 建築物環境衛生管理基準






































