「消防設備士は機械と電気の両方が要る」は、半分しか正しくない
消防設備士の解説でよく見る「機械と電気の両方の知識が必要」という説明は、類によっては当てはまりません。消防試験研究センターが公開している問題数の一覧を見ると、
- 機械が1問も出ない類(甲種4類・乙種4類・乙種7類)
- 電気が1問も出ない類(甲種5類・乙種5類・乙種6類)
が実在します。自分の得意分野と合う類を選べば、学習範囲そのものを半分に減らせます。逆にここを知らずに類を選ぶと、苦手分野を丸ごと背負うことになります。
出典: 試験科目・問題数(甲種) / 同(乙種)
甲種の内訳 — 3つのパターンしかない
| 類 | 法令共通 | 法令類別 | 基礎機械 | 基礎電気 | 構造機械 | 構造電気 | 構造規格 | 筆記計 | 鑑別等 | 製図 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 甲種1類 | 8 | 7 | 6 | 4 | 10 | 6 | 4 | 45 | 5 | 2 |
| 甲種2類 | 8 | 7 | 6 | 4 | 10 | 6 | 4 | 45 | 5 | 2 |
| 甲種3類 | 8 | 7 | 6 | 4 | 10 | 6 | 4 | 45 | 5 | 2 |
| 甲種4類 | 8 | 7 | — | 10 | — | 12 | 8 | 45 | 5 | 2 |
| 甲種5類 | 8 | 7 | 10 | — | 12 | — | 8 | 45 | 5 | 2 |
甲種は1類・2類・3類が完全に同じ配分で、機械と電気の両方が出ます。そこから外れるのが4類と5類で、
- 甲種4類は電気だけ(基礎10問・構造12問がすべて電気、機械はゼロ)
- 甲種5類は機械だけ(基礎10問・構造12問がすべて機械、電気はゼロ)
という鏡像の関係になっています。4類と5類は、両方とも規格が8問と多いのも共通点です(1〜3類は規格4問)。
乙種の内訳 — こちらも3パターン
| 類 | 法令共通 | 法令類別 | 基礎機械 | 基礎電気 | 構造機械 | 構造電気 | 構造規格 | 筆記計 | 鑑別等 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 乙種1類 | 6 | 4 | 3 | 2 | 8 | 4 | 3 | 30 | 5 |
| 乙種2類 | 6 | 4 | 3 | 2 | 8 | 4 | 3 | 30 | 5 |
| 乙種3類 | 6 | 4 | 3 | 2 | 8 | 4 | 3 | 30 | 5 |
| 乙種4類 | 6 | 4 | — | 5 | — | 9 | 6 | 30 | 5 |
| 乙種5類 | 6 | 4 | 5 | — | 9 | — | 6 | 30 | 5 |
| 乙種6類 | 6 | 4 | 5 | — | 9 | — | 6 | 30 | 5 |
| 乙種7類 | 6 | 4 | — | 5 | — | 9 | 6 | 30 | 5 |
甲種と同じ構図です。
- 両方が出る: 乙1・乙2・乙3
- 電気だけ: 乙4・乙7
- 機械だけ: 乙5・乙6
どの類でも筆記30問 + 鑑別等5問は変わりません。乙種に製図はありません。公式の乙種の一覧には「製図」の列そのものが存在せず、実技は鑑別等5問だけです。科目名も甲種は「構造・機能・工事・整備」、乙種は「構造・機能・整備」で、工事が入りません。
電気工事士の科目免除は、効く類と効かない類がある
電気工事士や電気主任技術者を持っていると消防設備士の科目が免除される、という説明は広く出回っていますが、免除されるのは電気に関する科目です。したがって、
電気の出題がゼロの類(甲種5類・乙種5類・乙種6類)では、電気工事士を持っていても免除できる科目がありません。
公式の一覧でも、甲種5類の「電気工事士・電気主任技術者」単独の行には免除の印がなく、試験時間は3時間15分のままです。乙種5類も同様で、1時間45分のまま短縮されません。
逆に、電気だけで構成される甲種4類・乙種4類・乙種7類では免除の効果が最も大きくなります。基礎的知識と構造・機能の電気部分がまとめて外れるためです。
⚠️ 免除の対象は年度や資格の種別で変わることがあります。申込前に必ず公式の試験科目・免除の一覧で自分の資格の行を確認してください。
⚠️ もうひとつ注意点があります。免除すると分母が減ります。 合格基準は「筆記の各科目40%以上かつ全体60%以上」なので、免除で問題数が減ると1問あたりの重みが増します。得点源だった科目を免除すると、かえって不利になることがあります。
得意分野から類を選ぶなら
| 出身・得意 | 向いている類 | 理由 |
|---|---|---|
| 電気系(電気工事士・電験・電子系) | 甲種4類 / 乙種4類 / 乙種7類 | 機械の出題がゼロ。免除の効果も最大 |
| 機械系(設備・配管・機械保全) | 甲種5類 / 乙種5類 / 乙種6類 | 電気の出題がゼロ |
| どちらも一定の素養がある | 甲種1〜3類 / 乙種1〜3類 | 両方出るぶん範囲は広いが、扱う設備の需要は大きい |
合格率もこの構図と無関係ではありません。令和6年度の実績では、両方が出る類(甲種1類 24.1%・甲種3類 25.6%・甲種2類 27.3%・乙種3類 23.6%)が下位に固まり、片方だけの類(甲種5類 35.0%・甲種4類 34.0%・乙種6類 36.2%・乙種7類 63.9%)が上位に来ます。
出典: 令和6年度 試験実施状況
範囲が広いほど合格率が下がる、という素直な関係です。「難しいから避ける」ではなく「自分の素養で範囲が半分になる類を選ぶ」という見方をすると、最初の1つを決めやすくなります。
規格の比重も類で違う
見落とされがちですが、構造・機能のうち「規格」が占める割合も類で違います。
| 類 | 構造・機能の問題数 | うち規格 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 甲種1〜3類 | 20問 | 4問 | 20% |
| 甲種4類・甲種5類 | 20問 | 8問 | 40% |
| 乙種1〜3類 | 15問 | 3問 | 20% |
| 乙種4〜7類 | 15問 | 6問 | 40% |
規格とは、機器そのものの技術上の規格を定める省令や告示のことです。4類なら感知器や受信機、5類なら金属製避難はしごや緩降機の規格が該当します。4類・5類系では構造・機能の4割が規格なので、条文の細かい数値を覚える比重がそのぶん高くなります。
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まず基礎的知識のカテゴリを数問解いてみると、「機械が向いているか電気が向いているか」は思った以上にはっきり出ます。類選びで迷っているなら、先に手を動かすのが速いです。
