放射線は、物質を通るときに原子を電離する(電子を弾き出してイオンにする)能力を持つ粒子線や電磁波です。一般に放射線というときは、この電離放射線を指します。法令では、電離放射線障害防止規則(以下「電離則」)第2条第1項が、放射線をアルファ線・重陽子線・陽子線、ベータ線・電子線、中性子線、ガンマ線・エックス線と定めています。
エックス線作業主任者試験の「エックス線の管理に関する知識」と「測定に関する知識」の土台で、第一種衛生管理者の有害業務の範囲にも入ります。この記事は、e-Gov法令検索の電離則(2026年4月1日施行の版)と、環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和7年度版)」をもとに書いています。
放射線の種類と正体(早見表)
| 種類 | 分類 | 正体 | 電荷 | 生まれる場所 |
|---|---|---|---|---|
| α(アルファ)線 | 粒子線 | 陽子2個と中性子2個からなるヘリウム原子核 | +(正) | 原子核 |
| β(ベータ)線 | 粒子線 | 原子核から飛び出した電子 | −(負) | 原子核 |
| 中性子線 | 粒子線 | 原子核が核分裂などのときに飛び出した中性子 | なし | 原子核 |
| γ(ガンマ)線 | 電磁波 | エネルギーの高い電磁波 | なし | 原子核 |
| X(エックス)線 | 電磁波 | エネルギーの高い電磁波 | なし | 原子核の外側(X線管など) |
α線・β線・γ線という名前は、発見された当時に正体が分からなかったために付けられた名前です。ヘリウム原子核は電子の約7,300倍の重さがあります。α線やβ線を出した直後の原子核は不安定なことが多く、γ線を出して安定になろうとします。α線とβ線を出すと原子の種類が変わりますが、γ線を出しても原子の種類は変わりません(環境省の基礎資料 第1章)。
電荷を持つα線・β線は、通った物質を直接電離します。特にα線は電離の密度が高く、β線などの数百倍の密度で電離を起こします。電荷を持たないγ線・X線は、物質との相互作用で生じた二次電子によって間接的に電離します。
透過力と止めるもの(遮へい)
| 種類 | 透過力と止めるもの |
|---|---|
| α線 | 電離する量が極めて多いので、紙1枚で止まる |
| β線 | エネルギーによるが、空気中で数m程度飛び、プラスチック1cm、アルミ板2〜4mm程度で止まる |
| γ線・X線 | 透過力が強く、空気中を数十m〜数百m飛ぶ。密度の高い鉛や鉄の厚い板で遮へいする。厚くするほど弱まるが、ゼロになるわけではない(下の半価層) |
| 中性子線 | 原子核と直接衝突してエネルギーを失い、その後、物質に吸収される。質量がほぼ同じ陽子(水素の原子核)と衝突するときに最も効果的にエネルギーを失う。水分の多い人体の中では、水の水素の原子核とぶつかりながらエネルギーを失っていく |
(環境省の基礎資料「放射線の透過力」より)
透過力と体への影響は別の話です。α線は皮膚の角質層を透過できないので外部被ばくは問題になりませんが、α線を出す放射性物質を体内に取り込む内部被ばくでは、狭い範囲に高密度の電離を起こし、DNAに大きな損傷を与えます。γ線・X線は深部の臓器まで届きますが、電離の密度は高くありません。
遮へいの計算も、エックス線作業主任者試験の「エックス線の管理に関する知識」の範囲に入ります。ある物質の半価層(線量率を半分にする厚さ)と同じ厚さの板を3枚重ねると、単色の細いエックス線で散乱線を考えないとき、線量率は(1/2)³=1/8になります。
γ線とX線の違い、制動X線と特性X線
γ線とX線は、どちらも実体は同じエネルギーの高い電磁波で、違うのは発生のしかたです。γ線は原子核から出て、X線は原子核の外側で発生します。電磁波は波長が短い(周波数が高い)ほどエネルギーが高く、放射線のエネルギーは電子ボルト(eV。1eV=1.6×10⁻¹⁹J)で表します。
X線管の中では、陰極と陽極(タングステン、モリブデン、銅など)の間に高電圧がかかっていて、陰極から出た熱電子が真空中を陽極へ高速で飛びます。
| X線の種類 | 発生のしかた |
|---|---|
| 制動X線 | 熱電子が陽極の原子核に引き寄せられて進む向きを変えるときに発生する。X線管で発生するX線のほとんどは制動X線 |
| 特性X線 | 陽極の原子の内側の軌道電子が弾き飛ばされ、空いた軌道へ外側の軌道の電子が移る(遷移する)ときに発生する |
X線管のスイッチを切れば、X線の発生は止まります(環境省の基礎資料「医療で使われるエックス線と発生装置」)。また、物理の基本的な関係として、制動X線の光子1個が持てるエネルギーの最大値は、電子が加速された電圧で決まり、管電圧120kVなら120keVです。特性X線のエネルギーは陽極の物質(元素)で決まります。
放射線・放射能・放射性物質の違いと単位
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 放射線 | 放射性物質から出る粒子線や電磁波そのもの |
| 放射能 | 放射線を出す能力(自然科学の分野での使い方) |
| 放射性物質 | 放射線を出す物質 |
密封された容器に放射性物質を入れた場合、容器から放射線は出てきますが、放射性物質は出てきません。放射線によって細胞が受けた影響の一部は残ることがありますが、放射線自体が体に残ることはありません(環境省の基礎資料 第1章)。
| 単位 | 表すもの |
|---|---|
| ベクレル(Bq) | 放射能の強さ。1秒間に1個の原子核が壊変(変化)する量が1ベクレル。放射線を出す側の単位 |
| グレイ(Gy) | 吸収線量。放射線が通ったところで吸収されたエネルギーの量 |
| シーベルト(Sv) | 等価線量・実効線量。人体への影響の大きさを表す。放射線を受ける側の単位 |
吸収線量(グレイ)に、放射線の種類ごとの放射線加重係数(α線20、β線とγ線1、中性子線はエネルギーにより2.5〜21)を掛けたものが等価線量で、さらに臓器ごとの組織加重係数で重み付けして足し合わせたものが実効線量です(環境省の基礎資料 第2章。係数は国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年勧告の値)。作業者の線量限度などの数字は 電離放射線障害防止規則の数字 で整理しています。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| X線もγ線と同じく原子核から放出される | 誤り | X線は原子核の外側で発生する電磁波(環境省の基礎資料) |
| γ線とX線は、実体が異なる別の種類の放射線である | 誤り | どちらも電磁波で、違うのは発生のしかた |
| X線管で発生するX線のほとんどは特性X線である | 誤り | ほとんどは制動X線 |
| α線は透過力が弱いので、体内に取り込んでも影響は小さい | 誤り | 内部被ばくでは高密度の電離でDNAに大きな損傷を与える |
| 中性子線は、鉛のような重い原子核で最も効果的に止まる | 誤り | 質量がほぼ同じ陽子(水素の原子核)との衝突で最も効果的にエネルギーを失う |
| γ線を放出すると、原子の種類が変わる | 誤り | 原子の種類が変わるのはα線とβ線の放出 |
| ベクレルは放射能の強さ、シーベルトは人体への影響の大きさを表す単位である | 正しい | 環境省の基礎資料 第2章 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、放射線の種類と性質を確かめられます。
- エックス線:制動エックス線が発生する仕組みを選ぶ1問
- エックス線:特性エックス線が発生する仕組みを選ぶ1問
- エックス線:アルファ線の透過力を問う1問
- エックス線:ベータ線の遮へい材と厚さを問う1問
- エックス線:中性子が最も効果的にエネルギーを失う場合を選ぶ1問
- エックス線:半価層の板を3枚重ねたときの線量率を求める1問
科目の免除で受ける科目が変わる人は エックス線作業主任者の科目免除 も参考になります。
出典
- 電離放射線障害防止規則 第2条(e-Gov法令検索・2026年4月1日施行の版)
- 環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和7年度版、HTML形式)」第1章 1.1〜1.3、第2章 2.3(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current/01-03-02.html ほか、2026年10月20日に確認)
当サイトの問題はエックス線作業主任者試験の問題ではありません。法令や公開資料をもとに独自に作った練習問題です。安全衛生技術試験協会とは関係ありません。









