消防設備士甲種特類は、特殊消防用設備等の工事・整備を行うための区分です。他の12区分とは試験の性格がはっきり違い、製図も鑑別もありません。
この記事では、甲種特類の出題がどの科目に重心を置いているかを、条番号つきで整理します。数値は2026年4月1日時点で施行されている版で確認しています。
まず試験の形を押さえる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 45問 (3科目 × 各15問) |
| 形式 | すべて四肢択一。製図・鑑別なし |
| 試験時間 | 2時間45分 |
| 合格基準 | 各科目40%以上 かつ 全体60%以上 |
| 受験料 | 6,600円 |
| 合格率 | 約31.9% (令和7年度) |
実技がないため「他の甲種より楽そう」に見えますが、各科目40%の足切りがある点は同じです。45問のうち1科目15問なので、1科目で6問未満しか取れないとその時点で不合格になります。3科目のどれも捨てられません。
消防設備士甲種特類のオリジナル予想問題165問で、出題形式を確かめる →
受験資格が最初の関門
甲種特類は誰でも受けられる試験ではありません。甲種第1類〜第3類のいずれか1つ + 甲種第4類 + 甲種第5類、つまり3種類以上の免状が受験資格です。
これは学習計画に直結します。甲種特類を目指す時点で、受験者はすでに屋内消火栓・スプリンクラー (1〜3類)、自動火災報知設備 (4類)、金属製避難はしご・救助袋 (5類) を学び終えています。その既得知識が効く科目とそうでない科目がはっきり分かれる、というのが甲種特類の出題傾向を理解する鍵です。
科目1: 工事整備対象設備等の構造・機能・工事・整備 (15問)
既得免状の知識がいちばん効く科目です。特定の類に閉じず、消防用設備等を横断して問われます。
たとえば屋内消火栓設備なら、消防法施行令第11条第3項の3区分がそのまま出ます。
- 1号消火栓 (令11条3項1号) … 水平距離25m以下・放水圧力0.17MPa以上・放水量130L/min以上
- 2号消火栓 (令11条3項2号イ) … 水平距離15m以下・放水圧力0.25MPa以上・放水量60L/min以上
- 広範囲型2号消火栓 (令11条3項2号ロ) … 水平距離25m以下・放水圧力0.17MPa以上・放水量80L/min以上
甲1で学んだ内容と重なりますが、特類では複数の設備を並べて比較させる形式が増えます。「この設備の基準として誤っているものはどれか」という問い方に対応できるよう、設備ごとの数値を横に並べて整理しておくのが有効です。
科目2: 火災及び防火 (15問) — ここが消防法の外側
甲種特類でいちばん性格が違う科目です。消防法令ではなく、建築基準法施行令が主戦場になります。中心は第112条の防火区画です。
面積区画 (令112条1項)
延べ面積が 1,500㎡を超える建築物は、床面積の合計 1,500㎡以内ごとに、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床・壁または特定防火設備で区画しなければなりません。
🔴 ここに引っかけがあります。 同項は、延べ面積・床面積を算定するときに「スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く」と定めています。全部を除くのではなく2分の1です。
ただし書による除外は2つで、第1号が劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途の部分、第2号が階段室の部分等です。
高層区画 (令112条7項〜9項)
11階以上では基準が厳しくなり、内装の仕上げによって3段階に分かれます。ここは数値の組合せがそのまま問われます。
| 条件 | 区画する床面積 |
|---|---|
| 原則 (11階以上・各階の床面積の合計100㎡超) — 7項 | 100㎡ 以内ごと |
| 壁・天井の室内に面する部分の仕上げと下地を準不燃材料とした場合 — 8項 | 200㎡ 以内ごと |
| 同じく不燃材料とした場合 — 9項 | 500㎡ 以内ごと |
100 → 200 → 500 と、内装を燃えにくくするほど区画を大きくしてよい、という構造で覚えます。⚠️ ただし8項・9項は「特定防火設備以外の防火設備で区画する場合を除き」という条件つきです。条文の但し書きまで読んでおいてください。
▶️ この科目は消防設備士の他の類をいくら勉強しても出てきません。 建築基準法施行令第112条を項ごとに読む時間を、独立して確保する必要があります。
科目3: 消防関係法令 (15問) — 特類固有の制度
ここも他の類には無い範囲です。中心は特殊消防用設備等という制度そのものです。
消防法第17条第3項は、政令で定める技術上の基準に従って設置・維持すべき消防用設備等に代えて、特殊消防用設備等を用いることを認めています。ただし無条件ではなく、手続きが要ります。
- 設備等設置維持計画を作成する
- 性能評価を受ける (消防法第17条の2)
- 総務大臣の認定を受ける
出題では、この順序と、それぞれを誰が行うのかが繰り返し問われます。計画を作成する者は誰か、性能評価を行うことができるのは誰か、といった主体の違いが選択肢の作り分けに使われるので、条文で主語を確認しておくのが確実です。
教材が無いことが最大の難所
甲種特類の実質的な難しさは、範囲の広さより学習素材の不足にあります。市販の対策本はほとんど流通しておらず、他の類のような定番テキストが存在しません。
したがって現実的な進め方は次のとおりです。
- 条文を一次資料として直接読む — 消防法・同施行令・同施行規則・建築基準法施行令
- 既得免状の知識を科目1に流用する — 甲1〜甲5で使ったテキストが素材になる
- 四肢択一の形式で反復する — 実技がないぶん、選択肢から選び出す精度がそのまま得点になる
消防設備士甲種特類の練習問題165問 (3科目) を解く →
まとめ — 学習の順番
- 科目1 (構造・機能) から入る。既得知識が効くので得点の土台になる
- 科目3 (消防関係法令) の特殊消防用設備等を、手続きの順序で押さえる
- 科目2 (火災及び防火) に最も時間を割く。建築基準法施行令第112条は項ごとに数値が違う
- 45問すべて四肢択一なので、演習で条文の言い回しに慣れるのが最短


