毒物劇物取扱責任者は、毒物や劇物を直接扱う製造所・営業所・店舗ごとに置き、毒物や劇物による保健衛生上の危害の防止に当たる人です(毒物及び劇物取締法第7条第1項)。 なれるのは、薬剤師、応用化学に関する学課を修了した人、都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験の合格者の3通りです(第8条第1項)。
この記事では、責任者の役目、なれる人、試験の3区分、置く場所、そして「意味ない」と言われる理由を、法令(e-Gov法令検索で2026年10月20日に確認)で整理します。置く場所の細かい条件、合格率、過去問、実地試験は、それぞれの記事に分けて書いています。
結論: 毒物劇物取扱責任者の要点
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| どんな人か | 毒物や劇物による保健衛生上の危害の防止に当たる、専任の人 | 第7条第1項 |
| どこに置くか | 毒物や劇物を直接扱う製造所・営業所・店舗ごと。決められた4つの事業で決められた毒物や劇物を扱う事業者(業務上取扱者)にも準用 | 第7条第1項・第22条 |
| なれる人 | 薬剤師/応用化学の学課を修了した人/毒物劇物取扱者試験の合格者 | 第8条第1項 |
| なれない人 | 18歳未満の人、麻薬・大麻・あへん・覚せい剤の中毒者、毒物・劇物や薬事の罪で罰金以上の刑を受け、刑の執行を終えるなどしてから3年たたない人など | 第8条第2項 |
| 試験の区分 | 一般・農業用品目・特定品目 | 第8条第3項 |
| 置いたとき | 営業者が30日以内に氏名を届け出る。変えたときも同じ | 第7条第3項 |
「取扱者」と「取扱責任者」— 試験の名前と、置く人の名前
検索では「毒物劇物取扱者」と「毒物劇物取扱責任者」が混ざって使われますが、法律では別のものを指します。
- 毒物劇物取扱者試験 — 都道府県知事が行う試験の名前(第8条第1項第3号)。
- 毒物劇物取扱責任者 — 営業者が製造所・営業所・店舗に置く人の名前(第7条)。
試験に合格すると、合格証が交付され(施行規則第9条。呼び方は東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県などは「合格証書」。関西の7府県は関西広域連合が交付)、責任者に「なることができる」資格を持ちます。免許は発行されません(東京都・埼玉県・関西広域連合の案内)。実際にどこかの責任者になるのは、営業者がその人を責任者として置いたときで、営業者は30日以内に、その所在地の都道府県知事(販売業の店舗が保健所を設置する市や特別区にあるときは、市長や区長)に氏名を届け出ます(第7条第3項・第4条第1項)。届出には、資格を証する書類(合格証の写しなど)、医師の診断書、雇用契約書の写しなどを添えます(施行規則第5条)。
責任者の役目と、置く場所
第7条第1項は、営業者に次のことを求めています。
毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を直接に取り扱う製造所、営業所又は店舗ごとに、専任の毒物劇物取扱責任者を置き、毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止に当たらせなければならない。
「毒物劇物営業者」は、毒物や劇物の製造業・輸入業・販売業の登録を受けた人です。登録は製造所・営業所・店舗ごとに受け、製造業と輸入業は5年ごと、販売業は6年ごとに更新を受けます(第4条第1項・第3項)。
置く義務は、営業者だけではありません。第22条により、電気めっき・金属熱処理・大型自動車での運送・しろあり防除の4つの事業で、決められた毒物や劇物を業務で扱う事業者(業務上取扱者)にも、第7条と第8条が準用されます。事業ごとに対象の物質が違うなど、細かい条件は「毒物劇物取扱責任者が必要な場所」にまとめています。この届出が要る業務上取扱者に当たらない者(4つの事業でも、決められた物を扱わない者を含む)が業務で毒物や劇物を扱うときは、保管や事故のときの決まり(第11条・第17条など)は準用されますが、責任者を置く第7条・第8条は準用されません(第22条第5項)。
置かなくてよい・1人で足りる場合もあります。
- 営業者が自分で責任者として危害の防止に当たる製造所・営業所・店舗は、別に置かなくてよい(第7条第1項ただし書き)。
- 製造業・輸入業・販売業のうち2つ以上を併せて営み、施設が互いに隣接しているとき、または同じ店舗で販売業を2つ以上併せて営むときは、通じて1人で足りる(第7条第2項)。
毒物劇物取扱責任者になれる3通り
| なれる人 | 試験 | 届出に添える書類の例 |
|---|---|---|
| 薬剤師 | 要らない | 薬剤師免許証の写し |
| 厚生労働省令で定める学校で、応用化学に関する学課を修了した人 | 要らない | 学校を卒業したことを証する書類 |
| 都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した人 | 要る | 試験に合格したことを証する書類 |
「厚生労働省令で定める学校」は、高等学校またはこれと同等以上の学校です(施行規則第6条)。どの学課が「応用化学に関する学課」に当たるかは、厚生労働省の通知(令和6年5月30日 医薬薬審発0530第1号)が基準を示し、届出を受ける都道府県などが卒業証明書などで確かめます。大学では薬学部や化学科などの学部・学科名で決まるほか、化学に関する授業科目を28単位以上修得している学科や、必修科目の単位のうち化学に関する科目が50%以上を占める学科も当たり、高等専門学校は工業化学科など(学科名で決まらなければ化学に関する科目を28単位以上)、高校と専門学校は化学に関する科目を25単位以上修得していることが基準です。大学院の応用化学に関する研究科の修了も当たります。東京都は、応用化学の学課の修了者に「有資格者」の証明書を出しておらず、卒業証明書や履修単位修得証明書がその証明になると案内しています(薬剤師は薬剤師免許証)。化学系の学校を出た人は、受験の前に届出先に確かめると、試験を受けずに済むことがあります。
なれない人(欠格)は、次のとおりです(第8条第2項)。
- 18歳未満の者
- 心身の障害により責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
- 毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者
毒物劇物取扱者試験の3区分
試験は、一般・農業用品目・特定品目の3つに分かれます(第8条第3項)。どの区分に合格したかで、責任者になれる場所が変わります。
| 区分 | 責任者になれる場所 |
|---|---|
| 一般 | 毒物劇物を扱う製造所・営業所・店舗の全般(業務上取扱者を含む) |
| 農業用品目 | 省令で定める農業用の品目だけを扱う輸入業の営業所と、農業用品目販売業の店舗 |
| 特定品目 | 省令で定める特定の品目だけを扱う輸入業の営業所と、特定品目販売業の店舗 |
農業用品目と特定品目の合格者は、第8条第4項により、上の場所でしか責任者になれません。製造業、一般の販売業、業務上取扱者の責任者にはなれません(神奈川県の資格と業態の表)。働く先が決まっていないなら、一般を受けておくと場所の制限がありません。
試験は都道府県ごとに行われ(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の7府県は関西広域連合がまとめて実施)、日程・受験料・合格基準は実施するところで違います。試験は筆記と実地で、筆記は毒物及び劇物に関する法規・基礎化学・毒物及び劇物の性質及び貯蔵その他取扱方法、実地は毒物及び劇物の識別及び取扱方法です(施行規則第7条)。受験資格はなく(学歴・年齢などを問わない)、住所に関係なくどの都道府県でも受けられ、合格すれば全国で責任者になれます(東京都の試験のページとQ&A)。ただし18歳未満の人は、合格しても責任者になれません。
| 実施するところ | 試験日(令和8年度) | 受験手数料 |
|---|---|---|
| 東京都 | 7月12日 | 12,900円 |
| 神奈川県 | 6月28日 | 10,500円 |
| 千葉県 | 8月5日 | 11,000円 |
| 山形県(東北共通の問題) | 9月4日 | 11,000円 |
| 関西広域連合 | 12月5日 | 10,300円 |
| 埼玉県 | 12月13日 | 11,000円 |
東京都は、試験は年1回と案内しています。上の6か所の合格基準は、どれも合計点(埼玉県は筆記の合計点)に加えて、科目ごとか、筆記と実地のそれぞれに基準を置いています(埼玉県と関西広域連合は令和7年度の基準。くわしくは毒物劇物取扱者試験の実地試験とは)。
合格率も、実施するところと年度で大きく違います。令和8年度の一般は、ぴよパスが結果を確かめた22都道府県で13.7%から64.9%でした(毒物劇物取扱責任者の合格率・難易度)。多くの都道府県は過去の問題と正答を公開しています(毒物劇物取扱責任者の過去問はどこで見られる?)。
「意味ない」と言われる理由と、意味がある人
「毒物劇物取扱責任者 意味ない」と検索される背景には、資格の使い道が法律で決まっていることがあります。
使い道が限られる理由
- 合格は免許ではありません。合格証が交付されるだけで、責任者になるのは、営業者に責任者として置かれたときです。営業者はその後30日以内に氏名を届け出ます(第7条第3項)。
- 責任者を置く義務があるのは、毒物や劇物を直接扱う製造所・営業所・店舗と、決められた4つの事業だけです(第7条・第22条)。そうした職場でなければ、法律上の役目はありません。
- 薬剤師や、応用化学の学課を修了した人は、試験を受けなくても責任者になれます(第8条第1項)。化学系の職場では、試験の合格者でなくても責任者になれる人がいることがあります。
- 農業用品目・特定品目の合格者は、責任者になれる場所が限られます(第8条第4項)。
意味がある人
- 毒物や劇物を売る店などを自分で開く人。営業者が自分で責任者になれば、別の人を置かなくてよい(第7条第1項ただし書き)。
- 毒物や劇物を扱う製造所・営業所・店舗や、めっき・熱処理・運送・しろあり防除の事業所のうち決められた毒物や劇物を扱う所で働く人、そこへ移りたい人。事業所ごとに専任の責任者が要るので、置ける人がいるかどうかが事業所の運営に関わります。
- 化学系の学校を出ていない人。薬剤師でなければ、試験の合格が責任者になる道です。合格は全国で使えます。
なお、毒物及び劇物取締法・施行令・施行規則には、営業の登録の更新(5年・6年ごと)の決まりはありますが、責任者になれる資格や試験の合格に有効期間・更新・講習を定めた条文はありません(2026年10月20日の版で確認)。
例題: ぴよパスの予想問題から2問
ぴよパスのオリジナル予想問題から2問です(本試験の問題ではありません)。
例題1(法規) 毒物劇物取扱責任者となることができる者として、法に掲げられていないものを選ぶ問題です。選択肢は「薬剤師」「医師又は歯科医師」「応用化学に関する学課を修了した者」「毒物劇物取扱者試験に合格した者」。
答え: 医師又は歯科医師。第8条第1項が掲げるのは、薬剤師、厚生労働省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了した者、都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した者の3つです。 この問題を解く →
例題2(法規) 毒物劇物営業者が毒物劇物取扱責任者を置いたときの届出について、正しいものを選ぶ問題です。
答え: 置いた日から30日以内に、都道府県知事にその氏名を届け出る。第7条第3項は、責任者を変更したときも同様としています。「変更したときは届出を要しない」「あらかじめ許可を受ける」は誤りです。 この問題を解く →
練習問題と模擬試験
ぴよパスの毒物劇物取扱者試験の練習問題は、法規・基礎化学・性質及び貯蔵その他取扱方法の3分野の問題に、全問の解説が付いています。どの都道府県でも出る毒物及び劇物取締法の法規がいちばん多く、実地(識別及び取扱方法)の分野はありません。問題の使い方は「毒物劇物取扱者 予想問題の使い方」にまとめています。筆記3科目(法規・基礎化学・性質と取扱い)を制限時間を決めて通しで解く独自の模擬試験は Premium の機能です(本試験の形式は都道府県ごとに違い、実地は独立した科目として入っていません)。
まとめ
- 毒物劇物取扱責任者は、毒物や劇物を直接扱う製造所・営業所・店舗ごとに置く、危害の防止に当たる専任の人(第7条第1項)。4つの事業で決められた毒物や劇物を扱う業務上取扱者にも準用(第22条第4項)。
- なれるのは、薬剤師・応用化学の学課を修了した人・毒物劇物取扱者試験の合格者の3通り(第8条第1項)。18歳未満などはなれない(第8条第2項)。
- 「毒物劇物取扱者試験」は試験の名前、「毒物劇物取扱責任者」は置く人の名前。合格すると免許ではなく合格証が交付され、責任者として置いたら営業者が30日以内に届け出る(第7条第3項)。
- 試験は一般・農業用品目・特定品目の3区分。受験資格はなく、どの都道府県でも受けられる。農業用品目・特定品目の合格者は、責任者になれる場所が限られる(第8条第4項)。
- 「意味ない」と言われるのは使い道が法律で決まっているから。毒物や劇物を扱う職場で働く人や、店を自分で開く人には、はっきりした使い道がある。
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出典
- 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)第4条・第7条・第8条・第22条(e-Gov法令検索・2026年10月20日の版で確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000303
- 毒物及び劇物取締法施行令(昭和30年政令第261号)第41条・第42条(e-Gov法令検索・2026年10月20日の版で確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/330CO0000000261
- 毒物及び劇物取締法施行規則(昭和26年厚生省令第4号)第5条・第6条・第7条・第9条(e-Gov法令検索・2026年10月20日の版で確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000100004
- 厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知「毒物劇物取扱責任者の資格要件について」(令和6年5月30日 医薬薬審発0530第1号。神奈川県のページに掲載の写し): https://www.pref.kanagawa.jp/documents/10032/shikakuyouken.pdf
- 神奈川県「毒物劇物取扱責任者とは」: https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n3x/yakumu/dokugeki/dokugekisekininsya.html
- 東京都保健医療局「毒物劇物取扱者試験」: https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/sonota/d_g/shiken
- 同「毒物劇物取扱責任者Q&A」: https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/sonota/d_g/shikaku/doku_qa
- 同「応用化学に関する学課を修了した者とは」: https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/sonota/d_g/shikaku/o_kagaku
- 神奈川県「令和8年度毒物劇物取扱者試験について」: https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n3x/yakumu/dokugeki/dokugekisikennendo.html
- 千葉県「令和8年度毒物劇物取扱者試験のお知らせ」: https://www.pref.chiba.lg.jp/yakumu/dokugeki/dokugeki-oshirase.html
- 埼玉県「令和8年度 埼玉県毒物劇物取扱者試験の御案内」: https://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/eiseishiken/dokugekishiken/h30/goannai.html
- 山形県「令和8年度 毒物劇物取扱者試験 受験案内」: https://www.pref.yamagata.jp/documents/2735/jukennannai.pdf
- 関西広域連合「令和8年度 毒物劇物取扱者試験受験案内」: https://www.kouiki-kansai.jp/material/files/group/12/R8dokubutugekibutusikenjukenannai.pdf










