結論: 社労士の難しさは「範囲の広さ × 科目別の足切り」に集約される
社労士(社会保険労務士)の合格率は、全国社会保険労務士会連合会試験センターの公表値で近年おおむね6〜7%、年によっては5%台まで下がる難関国家試験です。ただし「合格率が低い」という数字だけでは難しさの正体は見えません。本質は、労働・社会保険分野を横断する出題範囲の広さと、選択式・択一式それぞれにある科目別基準点(足切り)が重なる点にあります。総合点が合格ラインに届いても、1科目でも基準点を割れば不合格になる——この構造を理解することが対策の出発点です。
| 観点 | 数値・内容 |
|---|---|
| 試験実施団体 | 全国社会保険労務士会連合会 試験センター |
| 直近の合格率 | 令和7年度(第57回)5.5% |
| 合格率の傾向 | 近年おおむね6〜7%台、年により5%台 |
| 試験形式 | 選択式8問 + 択一式70問 |
| 合格の関門 | 総合点 + 科目別基準点(足切り)の二重基準 |
| 受験手数料 | 15,000円 |
| 受験資格 | 学歴・実務経験・国家試験合格のいずれか1つ |
合格率の推移 — 「6〜7%」を平均で捉える
社労士の合格率は年度ごとに振れますが、長期で見るとおおむね6〜7%に収れんします。直近では一段下がった回もあり、特定の1回だけを見て判断しないことが大切です。
| 年度(回) | 合格率(約) | 傾向の補足 |
|---|---|---|
| 令和3年度(第53回) | 7.9% | 近年では高め |
| 令和4年度(第54回) | 5.3% | 一段厳しい回 |
| 令和5年度(第55回) | 6.4% | 平均的な水準 |
| 令和6年度(第56回) | 6.9% | 6%台後半 |
| 令和7年度(第57回) | 5.5% | 3年ぶりに5%台 |
令和7年度(2025年)は受験者43,421名に対し合格者2,376名で、合格率は5.5%でした。最新の確定値は試験センターおよび厚生労働省の発表で確認するのが確実です。
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他資格との難易度比較 — 士業のなかでの位置づけ
合格率だけを横並びにすると、社労士は士業のなかでも上位の難関に入ります。あくまで目安ですが、相対的な位置づけの把握に役立ちます。
| 資格 | 合格率の目安 | 学習時間の目安 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 約4% | 3,000時間前後 |
| 社会保険労務士 | 約6〜7% | 800〜1,000時間前後 |
| 行政書士 | 約10〜15% | 600〜1,000時間前後 |
| 宅地建物取引士 | 約15〜17% | 300〜500時間前後 |
数値は年度や集計で変動するため、順位は固定的なものではありません。社労士は「合格率が一桁台で、かつ足切りで取りこぼしが起きやすい」点が、体感的な難しさを底上げしています。
試験形式と配点 — 選択式8問 + 択一式70問
社労士試験は、午前の選択式と午後の択一式で構成されます。同じ法律でも問われ方が異なり、対策の質も変わります。
| 区分 | 出題数 | 配点 | 試験時間 |
|---|---|---|---|
| 選択式 | 8問(各5問の空欄) | 40点満点 | 80分 |
| 択一式 | 70問(7科目×10問) | 70点満点 | 210分 |
選択式は1つの空欄に語群から語句を選んで埋める形式で、1空欄1点。1問あたり5点のため、1問の比重が重いのが特徴です。択一式は5肢から1つを選ぶ形式で、長文の事例問題が多く、時間配分も難所になります。
合格基準 — 総合点と科目別基準点の二重ハードル
社労士で最もつまずきやすいのが、この合格基準の構造です。総合点と科目別基準点(足切り)の両方を同時に満たす必要があります。
| 区分 | 総合点の基準(原則) | 科目別基準点(原則) |
|---|---|---|
| 選択式 | 40点中28点以上 | 各科目5点中3点以上 |
| 択一式 | 70点中49点以上 | 各科目10点中4点以上 |
ここでいう「原則」は、その年の難易度に応じて引き下げ補正(救済)が入ることがあるためです。たとえば令和7年度は、選択式の労災保険法・労働一般常識・社会一般常識で基準点が2点に、択一式の雇用保険法で3点に引き下げられました。補正は事前に保証されるものではないので、当てにせず全科目を基準点以上に保つ前提で準備するのが安全です。
足切りの怖さは、次の例で具体的に見えてきます。総合点が合格ラインを超えていても、1科目でも基準点を割ると不合格になります。
| ケース | 選択式の総合点 | ある1科目 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 例A | 30点(基準クリア) | 3点(基準クリア) | 合格圏 |
| 例B | 32点(基準クリア) | 2点(基準割れ) | 不合格 |
| 例C | 28点(基準クリア) | 5点(高得点) | 他科目次第 |
例Bのように、得意科目で稼いでも苦手な1科目が基準点に届かなければ、その1点差で不合格になり得ます。これが「総合点だけでは受からない」と言われる理由で、全科目を満遍なく底上げする学習が欠かせません。とりわけ選択式は語句1つの正誤が大きく響くため、知識の穴を作らないことが重要です。
出題範囲 — 労働・社会保険の主要法令を横断する
範囲の広さも難度の柱です。択一式は7科目(各10問)、選択式は8科目(各1問)で、労働分野と社会保険分野の主要法令を横断します。
| 分野 | 主な科目(選択式は8科目) |
|---|---|
| 労働関係 | 労働基準法・労働安全衛生法/労災保険法/雇用保険法 |
| 労働の一般常識 | 労務管理その他の労働に関する一般常識(労一) |
| 社会保険の一般常識 | 社会保険に関する一般常識(社一) |
| 社会保険関係 | 健康保険法/厚生年金保険法/国民年金法 |
択一式では労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)も問われます。一般常識(労一・社一)は範囲が定めにくく、白書・統計や法改正からも出題されるため、選択式で基準点割れを起こしやすい要注意科目とされています。
受験資格と受験手数料 — 申込前に確認したい前提
社労士には受験資格があり、誰でもすぐに受けられるわけではありません。学歴・実務経験・国家試験合格のいずれか1つを満たす必要があります。
| 区分 | 主な要件の例 |
|---|---|
| 学歴 | 大学・短大・高等専門学校の卒業、4年制大学で所定単位の修得など |
| 実務経験 | 法人の役員・従業員として通算3年以上、所定の事務に従事など |
| 国家試験合格 | 行政書士試験の合格者、厚生労働大臣が認める国家試験の合格者など |
受験手数料は15,000円です。第58回(令和8年度)の試験日は2026年8月23日(日)、インターネット申込は2026年4月13日から5月31日まで、合格発表は10月1日が公表されています。資格要件や日程の細目は変更されることがあるため、申込前に試験オフィシャルサイトで最新情報を確認してください。
難易度を踏まえた学習の組み立て方
合格率と足切りの構造を踏まえると、対策の方向性は具体化できます。残り期間別に優先順位を整理します。
| 残り期間 | 重点 |
|---|---|
| 9か月以上 | 全科目の基礎を一巡し、年金2法と労働基準法の土台を固める |
| 6か月 | 択一式の演習量を増やし、苦手科目の基準点割れを潰す |
| 3か月 | 選択式の語句精度を上げ、一般常識(労一・社一)を補強 |
| 1か月 | 法改正・白書の最新論点を確認し、全科目の取りこぼしを点検 |
社労士は1回で仕上がる人ばかりではなく、複数回受験を経て合格する人が多い試験です。重要なのは、得点源を伸ばすことと同じくらい、足切り回避のために全科目を一定水準に保つこと。範囲が広いぶん、独学で法改正や一般常識まで追い切るのが負担になりやすく、最新版の教材や講座で論点の優先順位づけを補う選択も現実的です。
なお、労務・社会保険の入り口にある国家資格として第一種衛生管理者とはを先に取り、労働安全衛生の基礎を固めてから社労士に進む人もいます。難易度の感覚を比べたい場合は第一種衛生管理者の難易度も参考になります。
次の一歩
社労士の合格率は近年おおむね6〜7%(令和7年度は5.5%)で、難しさの本質は出題範囲の広さと科目別基準点(足切り)の二重ハードルにあります。総合点だけを追うと、苦手な1科目の基準点割れで不合格になりかねません。まずは試験オフィシャルサイトで受験資格と最新日程を確認し、全科目を満遍なく底上げする長期計画を立てることが、合格に近づく確かな一歩です。
出典
- 社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会 試験センター) — 試験概要・受験資格・合格基準・日程
- 厚生労働省「社会保険労務士試験の合格者発表」 — 各回の受験者数・合格者数・合格率
- 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)


































































