行政書士試験で「択一はそこそこ取れるのに、あと一歩で180点に届かない」という人の多くが、記述式の扱いに悩んでいます。記述式はわずか3問ですが配点は60点。試験全体300点の20%、法令等科目244点だけで見れば約4分の1を、この3問が占めています。
しかも採点基準は公表されておらず、「何を書けば点になるのか」が見えにくい科目です。だからこそ捨てたくなりますが、記述を捨てると合格はぐっと遠のきます。この記事では、配点構造を正しくつかんだうえで、40字で部分点を積み上げる書き方の型と、本番の時間配分までを整理します。
結論:行政書士の記述式はこう攻める
まず探している数字と方針に直答します。行政書士の記述式は、満点ではなく部分点の積み上げで戦う科目です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 3問 (民法2問・行政法1問) |
| 配点 | 1問20点・合計60点 |
| 形式 | 各40字程度で記述 |
| 全体に占める割合 | 法令等244点の約4分の1 / 全体300点の20% |
| 採点基準 | 非公表 (キーワード中心と推測) |
| 部分点 | あり (要素が書けた分だけ加点) |
| 現実的な目標 | 20〜30点 (合格者平均はおおむね30点前後) |
ポイントは、記述式を「満点を狙う難所」ではなく「部分点を確実に拾う得点源」と捉え直すことです。択一で覚えた条文・判例を文章で再現できれば、それがそのまま点になります。以下で、配点の中身と書き方の型を順に掘り下げます。
この記事で分かること
- 記述式60点が合否にどれだけ効くのか、配点構造の正確な姿
- 部分点はどう付くと考えられ、何を書けば加点されるのか
- 40字で要素を詰めるための、再現性のある書き方の型
- 民法・行政法それぞれで狙われやすい論点の方向性
- 本番で記述に割く時間と、択一とのバランスの取り方
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記述式60点が合否を左右する理由
記述式が重いのは、単に配点が大きいからだけではありません。記述を捨てた場合に、残りで取らなければならない点が一気に跳ね上がるからです。行政書士の合格は全体180点以上ですが、記述式60点を0点と仮定すると、択一式と多肢選択式の240点満点のなかで180点、つまり75%を取る計算になります。
| 記述で見込む点 | 択一・多肢で必要な点 (240点中) | 必要な得点率 |
|---|---|---|
| 0点 (捨てる) | 180点 | 75.0% |
| 20点 | 160点 | 66.7% |
| 30点 | 150点 | 62.5% |
| 40点 | 140点 | 58.3% |
記述で20〜30点を見込めるだけで、択一側に求められる得点率が10ポイント前後も下がります。択一で75%を安定して取るのは相当な実力が要りますが、60%台で済むなら現実味が変わります。記述式は「上乗せのボーナス」ではなく、択一の負担を軽くする土台だと考えるのが正確です。合格基準の全体像は 行政書士の合格率・難易度 で整理しているので、3つの基準の関係とあわせて押さえると配分を決めやすくなります。
部分点の仕組み:満点でなく加点を積む
記述式の正式な採点基準は公表されていません。ただし、合格者の再現答案や予備校の分析から、解答に含まれる論点や条文・判例のキーワードごとに点が割り振られていると考えられています。つまり、完璧な答案でなくても、求められている要素を1つでも書けば、その分だけ加点される可能性が高いということです。
| 書き方 | 想定される評価 |
|---|---|
| 設問の要素をすべて正確に記述 | 満点〜高得点 |
| 結論は合っているが理由・要件が不足 | 部分点 |
| キーワードは書けたが文章が不正確 | 一部加点の可能性 |
| 空欄・設問と無関係な記述 | 0点 |
ここから導ける方針はシンプルです。第一に、空欄で出さないこと。思いつく条文名・判例の結論・要件を断片でも書けば、加点の芽が残ります。第二に、満点狙いの書き直しに時間を溶かさないこと。20点満点の1問に固執するより、3問それぞれで「確実に取れる要素」を拾うほうが合計点は伸びます。合格者の記述平均がおおむね30点前後とされるのも、部分点の堅実な積み上げが現実解であることを示しています。
40字記述の型:結論・理由・要件で詰める
40字程度という字数は、思っているより短いものです。接続詞や言い回しに凝る余地はほとんどなく、求められる要素を過不足なく詰めることだけに集中します。多くの設問は「誰が・誰に対して・何を・どういう理由で」という骨組みで答えられるよう作られているので、次の手順で組み立てると安定します。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 設問の問いを特定 | 「何を答えさせたいのか」(結論/要件/理由) を見抜く |
| キーワードを書き出す | 関連する条文・判例・法律用語をメモ欄に列挙 |
| 骨組みを決める | 主語と述語、答えの中心を一文で仮置き |
| 40字に圧縮 | 飾りを削り、要素だけを残して整える |
たとえば「どのような場合に、誰に対して、何を請求できるか」を問う設問なら、その3点が答案に含まれているかを確認しながら書きます。逆に、要件を聞かれているのに結論だけ書く、結論を聞かれているのに背景を長々書く、といった「問いとずれた答案」は加点されません。設問の問いかけにそのまま答える——この一点を外さないことが、40字記述の最大のコツです。主語・述語がねじれていないかも、書き終えたら一度だけ見直します。
民法の記述:要件と効果をセットで覚える
記述式3問のうち2問を占める民法は、記述対策の主戦場です。民法の記述では、ある制度について「成立要件」と「法律効果」をセットで書かせる問題が多く、択一で要件を曖昧に覚えていると、文章にした瞬間に手が止まります。逆に言えば、択一の学習段階で要件と効果を正確に詰めておけば、それがそのまま記述の答案になります。
| 狙われやすい方向性 | 記述で問われがちな要素 |
|---|---|
| 債権回収・担保 | 誰に何を請求できるか・要件・効果 |
| 契約の解除・取消 | 主張できる根拠・効果・相手方 |
| 物権変動・対抗 | 対抗の可否・第三者の範囲 |
| 不法行為・債務不履行 | 成立要件・請求できる内容 |
民法は択一でも配点が大きいので、記述専用にやり込むより、択一の理解を「文章で再現できるレベル」まで引き上げる意識が効率的です。権利関係の論点は宅建とも重なる部分が多く、隣接資格の解説 宅建士の権利関係攻略 を読むと民法の頻出テーマを別角度から復習できます。要件と効果をペアで言語化する練習が、そのまま民法記述の得点力になります。
行政法の記述:手続と条文の正確さで差がつく
行政法は記述式で1問の出題ですが、択一でも最大の配点を持つ中心科目です。行政法の記述は、行政手続法・行政事件訴訟法・行政不服審査法といった手続法から、条文の要件や手続の流れを正確に書かせる傾向があります。民法に比べて条文ベースで答えが固まりやすく、覚えていればそのまま書ける分、条文知識の正確さがダイレクトに点に出るのが特徴です。
| 手続法 | 記述で問われがちな要素 |
|---|---|
| 行政手続法 | 処分の手続・理由提示・申請に対する応答 |
| 行政事件訴訟法 | 訴訟類型・要件・誰を相手にどう争うか |
| 行政不服審査法 | 審査請求の流れ・期間・対象 |
行政法は範囲が比較的限定的で、出題テーマもある程度絞られます。条文の文言を「言える」レベルまで覚えておけば、行政法の記述は安定した得点源にできます。逆に、なんとなく理解しているだけだと正確な用語が出てこず、部分点止まりになりがちです。択一で行政法の条文を詰める作業が、記述の1問をまるごと取りにいく準備になります。
本番の時間配分:記述は後半にまとめて書く
記述式は配点こそ大きいものの、解く順番を誤ると本番でリズムを崩します。試験時間は3時間ですが、択一・多肢・記述・基礎知識をすべて解く必要があり、記述に没頭しすぎると時間切れのリスクが上がります。一般的には、確実に取れる択一を先に処理し、頭が温まった状態で記述に取りかかる流れが安定します。
| 場面 | 進め方の目安 |
|---|---|
| 序盤 | 基礎知識・法令択一を先に解き、得点を確保 |
| 中盤 | 多肢選択式を処理し、解答の感覚を整える |
| 後半 | 記述3問に時間をまとめて配分 |
| 直前 | 空欄を残さず、断片でも書き込んで提出 |
記述で大事なのは、1問に時間を溶かさないことです。書き出せない問題に張りつくより、3問を一巡して書ける要素から埋め、残り時間で精度を上げるほうが合計点は伸びます。記述は見直しの効果が大きいので、最後の数分で誤字や主述のねじれを直す時間を残しておくと安心です。
まとめ:今日やる1アクション
行政書士の記述式は、3問60点という配点の重さと、採点基準が見えない不安から敬遠されがちです。しかし正体は、択一で覚えた条文・判例を40字で再現する作業にすぎません。満点ではなく部分点を積み上げ、20〜30点を堅実に拾えれば、択一側の負担は大きく下がり、合格ラインが現実的な射程に入ります。
まずは手元の過去問から記述式を1問選び、模範解答を見ずに40字で書いてみてください。そのうえで模範解答と照らし、「どのキーワードが抜けたか」を1つずつ確認する。この往復こそが、記述の型を体に入れる近道です。書けなかった要素は、たいてい択一の理解が曖昧な箇所と一致します。記述の弱点は択一の弱点——そう捉えれば、記述対策は合格全体を底上げする学習に変わります。
出典:
- 一般財団法人 行政書士試験研究センター — 試験科目・配点・合否判定基準 (令和7年度合否判定基準)
- 行政書士試験の出題形式・配点に関する公表情報 — 記述式の出題数・配点 (3問・各20点・計60点)

























































