証券外務員の計算問題は、公式を選ぶ→分母と単位を確かめる→数値を代入する順で解きます。PERと配当利回りのように、似た数字を使っていても分母が違う式は、まとめて覚えないことが大切です。
この記事では独自の例題で途中式を確認し、同じ論点の二種の株式業務・債券業務の演習へ進めます。後半には、二種の計算問題16問を解く順に並べた一覧を置きました。問題文に税・手数料・端数処理などの指定がある場合は、その条件を優先してください。
計算問題を捨てる前に、配点を確認する
| 項目 | 二種 | 一種 |
|---|---|---|
| ○×方式 | 50問・各2点 | 70問・各2点 |
| 五肢選択方式 | 20問・各10点 | 30問・各10点 |
| 満点 | 300点 | 440点 |
| 合格に必要な得点 | 210点以上 | 308点以上 |
| 試験時間 | 2時間 | 2時間40分 |
五肢択二は各5点です。日本証券業協会の試験概要は、五肢選択方式に語句選択と計算問題を挙げています。五肢選択の全問が計算という意味ではなく、計算だけで何点取れるかは、この表からは分かりません。
ただ、○×方式だけを全問正解しても、二種100点・一種140点で合格点に届きません。苦手な計算をすべて後回しにする前に、まず1つの式で解ける問題から確認しましょう。以下は学び直しの順番として並べた例で、公式の頻出順位ではありません。
債券利回り:年利息を金額にしてから割る
ここでは固定利付債を想定し、税・手数料・経過利子を考えない単利の学習用計算を扱います。価格はすべて額面100円当たりでそろえます。
| 種類 | 式(最後に×100で%へ) | 価格差・期間の選び方 |
|---|---|---|
| 直接利回り | 年利息÷購入価格 | 価格差を含めない |
| 最終利回り | {年利息+(償還価格−購入価格)÷残存年数}÷購入価格 | 購入から償還まで |
| 応募者利回り | {年利息+(償還価格−発行価格)÷償還までの年数}÷発行価格 | 発行時に買って償還まで |
| 所有期間利回り | {年利息+(売却価格−購入価格)÷所有年数}÷購入価格 | 購入から途中売却まで |
最終利回りは償還まで保有したときの利回りです。三菱UFJ eスマート証券の用語解説にも、年利息と年当たりの償還差損益を購入価格で割る算式があります。複利の利回りや実際の税引後収益を、この簡略式だけで計算するものではありません。
例題1:直接利回りと最終利回りを同じ条件で比べる
額面100円・年利率2%・購入価格96円・償還価格100円・残存4年とします。
- 年利息は100×0.02=2円。
- 直接利回りは2÷96×100=約2.08%。
- 償還差益の1年分は(100−96)÷4=1円。
- 最終利回りは(2+1)÷96×100=3.125%。
最後の値を小数第2位まで答える指定なら3.13%です。直接利回りへ償還差益を入れたり、最終利回りで4円の差益を1年分に直し忘れたりしないようにします。
例題2:償還前に売却するなら、売却価格を使う
額面100円・年利率2%の債券を96円で買い、2年間保有して98円で売った条件です。
- 年利息=2円。
- 売却差益の1年分=(98−96)÷2=1円。
- 所有期間利回り=(2+1)÷96×100=3.125%。
この問いで使う終点は98円の売却価格です。償還価格100円や、購入時の残存年数を代入しません。式を選ぶ前に「満期まで持つ」「途中で売る」のどちらなのかを読みます。
PER・PBR・配当利回り:分母を別々に覚える
| 指標 | 式 | 答えの単位 |
|---|---|---|
| PER | 株価÷1株当たり当期純利益(EPS) | 倍 |
| PBR | 株価÷1株当たり純資産(BPS) | 倍 |
| 配当利回り | 1株当たり年間配当金÷株価×100 | % |
PERの分母は利益、PBRの分母は純資産、配当利回りの分母は株価です。PERと配当利回りを「どちらも株価で割る」と覚えると、PERが逆になります。JPX:PER・PBR・株式利回り
例題3:同じ会社の3指標を計算する
株価1,800円、EPS90円、BPS1,200円、1株当たり年間配当金54円とします。
- PER=1,800÷90=20倍。
- PBR=1,800÷1,200=1.5倍。
- 配当利回り=54÷1,800×100=3%。
PERを90÷1,800とすると0.05になり、求めたものが逆数です。利益や純資産は、この例題では正の値として与えています。指標が低ければ必ず有利という投資判断まで、この計算から導くことはできません。
売買代金・手数料:%を小数へ直す
例題4:手数料込みの買付代金を求める
株価2,000円で500株を買い、手数料を約定代金の0.3%とする独自の条件です。この例では手数料以外の税・費用は考えません。0.3%は実在する証券会社の料金ではありません。
- 約定代金=2,000円×500株=1,000,000円。
- 手数料=1,000,000円×0.003=3,000円。
- 買付時の支払額=1,000,000+3,000=1,003,000円。
同じ約定代金・手数料で売る条件なら、受取額は1,000,000−3,000=997,000円です。「0.3を掛ける」「買いなのに手数料を引く」の2つを確認します。税率や手数料の最低額などが問題に指定されていれば、その分を計算に入れます。
信用取引:保証金率だけでなく最低額と条件を見る
二種でも信用取引・デリバティブの基礎的知識は、「株式業務」「債券業務」等の各科目に含めて出題されます。一種ではこれに加えて、独立した科目「デリバティブ取引」で実務的・専門的知識を扱います。二種だからこの分野を一切見なくてよい、とはしません。日本証券業協会の出題範囲
JPXの説明では、信用取引の委託保証金は約定価額の30%以上で、30万円に満たない場合は30万円が必要です。レバレッジ型・ダブルインバース型ETF/ETNは60%以上という別条件があります。取引所の規制や証券会社の条件も確認が必要なため、対象を読まず一律30%で計算しません。JPX:委託保証金
例題5:30%で計算した額が最低額を下回る場合
通常の株式について、新規の信用取引の約定代金80万円、必要保証金率30%、最低保証金30万円、ほかに建玉や差入れ保証金はない条件とします。
- 80万円×30%=24万円。
- 24万円は最低保証金30万円を下回る。
- この条件で必要な保証金は30万円。
追証の問題は、さらに受入保証金から控除する損失・費用、維持率、追加差入れ後に必要な水準を読みます。値下がり額だけを、そのまま追証額にするものではありません。JPXの信用取引の仕組みは、当初の保証金と追証の発生を分けて説明しています。
オプション:コール・プットと買い・売りを分ける
ここでは株価が0以上の株式オプションについて、単独ポジションを満期まで保有し、手数料・税を考えない場合を扱います。Sは満期の株価、Kは権利行使価格、pは1株当たりのプレミアムです。
| ポジション | 1株当たりの満期損益 |
|---|---|
| コール買い | max(S−K, 0)−p |
| コール売り | p−max(S−K, 0) |
| プット買い | max(K−S, 0)−p |
| プット売り | p−max(K−S, 0) |
maxは2つの値の大きい方を選ぶ記号です。権利行使で得る金額を先に求め、買い手は払ったプレミアムを引きます。売り手は受け取ったプレミアムから支払う金額を引きます。実際の契約の損益は、これに取引単位と数量を掛けます。JPX:有価証券オプションの商品概要
例題6:プット買いの満期損益
K=1,000円、p=50円、満期の株価S=800円とします。
- 権利行使で得る金額=1,000−800=200円。
- 買い手の損益=200−50=1株当たり150円の利益。
- 同条件のプット売りは50−200=1株当たり150円の損失。
株価が1,100円ならプットの権利は行使せず、買い手の損失はプレミアム50円です。株価が0円まで下がった場合、この条件のプット買いの利益は1,000−50=950円が上限になります。
したがって、「オプションの買い手は利益がすべて無限」とはまとめません。株価上昇に上限を置かないコール買いと、株価の下限を0とするプット買いを区別します。ここで求めたのは満期の損益であり、途中のオプション価格や証拠金所要額ではありません。
JPXの決済方法の解説では、株価指数オプションを例に、満期の差額からプレミアムを差し引く計算と権利放棄を確認できます。原資産や商品によって決済方法は異なるため、ここでは利益の計算手順を対応させて読んでください。
一種の範囲を練習する場合は、一種の問題一覧から信用取引やデリバティブの科目へ進めます。
証券外務員二種の計算問題16問を解く順番
例題で式の形を確認したら、同じ論点を別の数値で解きます。以下は二種の五肢選択方式に合わせた練習問題16問を、利回り → 株価から出す価格 → 受渡金額 → 投資信託 → 財務分析と税の5段に並べたものです。どの段でも問われるのは「分母に何を置くか」なので、この順に進めると式の選び方が重なって残ります。各問の解説では、誤答の選択肢がどの計算ミスから出てきた数字なのかまで確認できます。
利回り:終点と分母を読み分ける
- 発行時に買って償還まで保有した場合の利回りを求める問題:{表面利率+(額面100円−発行価格)÷償還期限}÷発行価格×100で求め、分母に発行価格ではなく額面100円を置いた値が選択肢に混ざっています。
- 償還前に売却した場合の利回りを求める問題:{表面利率+(売却価格−購入価格)÷所有年数}÷購入価格×100で求め、値下がりの年額を引かずに足すと符号が逆の数字になります。
株価から価格と規模を出す
- 株式分割後の理論上の株価を求める問題:分割前の株価÷分割後の株式数で求め、「何株に分割するか」を「何株増えるか」と読むと割る数が1つずれます。
- 転換社債のパリティ価格を求める問題:株価÷転換価額×100で求め、割る向きを逆にした逆数や、株価と転換価額の差額をそのまま円で置いた値が誤答になります。
- 時価総額を求める問題:株価×発行済株式総数で求め、自己株式を発行済株式総数へ上乗せしたり、未発行分を含む発行可能株式総数を使ったりすると額が膨らみます。
受渡金額:本体の価格に何を足すか
- 買付けの受渡代金を求める問題:約定代金+委託手数料+手数料にかかる消費税等で求め、消費税等を落とす・買いなのに手数料を差し引く・約定代金にも課税する、の3通りが誤答として並びます。
- 経過利子を求める問題:額面金額×表面利率×経過日数÷365で求め、日数で按分せず1年分の利子をそのまま答えると、桁の近い誤答に入ります。
投資信託:純資産と個別元本を分ける
- 1万口当たりの基準価額を求める問題:(資産総額−負債)÷受益権総口数×1万口で求め、1口当たりのまま答える・負債を引き忘れる・口数の桁を読み違える、が誤答の由来です。
- 1年間に負担する信託報酬を求める問題:評価額×税込の年率で求め、税込の率へさらに消費税を掛けたり、年率を四半期ごとの率と取り違えたりすると額が跳ね上がります。
- 普通分配金を求める問題:分配落ち後の基準価額が個別元本を下回る部分が元本払戻金、分配金からそれを引いた残りが普通分配金で、問われていない元本払戻金の額を答えないようにします。
財務分析と税:分母を1つずつ確かめる
- 総資産回転率を求める問題:売上高÷総資産で求め、分母を自己資本や流動資産に替えた値が、それぞれ別の指標として選択肢に並びます。
- 総資産利益率(ROA)を求める問題:当期純利益÷総資産で求め、分母を自己資本にするとROE、売上高にすると売上高当期純利益率という別の指標に化けます。
- 1株当たり当期純利益(EPS)を求める問題:当期純利益÷発行済株式総数で求め、配当金を差し引いてから割った値や、分子を純資産に替えたBPSが誤答として用意されています。
- 配当性向を求める問題:配当金総額÷当期純利益×100で求め、分母を自己資本や売上高に替えた値と、配当に回さず社内へ留保した割合が紛れています。
- 損益分岐点売上高を求める問題:固定費÷(1−変動費率)で求め、固定費を変動費率で割ったり、変動費と固定費を単純に合計したりすると別の数字が出ます。
- 上場株式の譲渡益にかかる税額を求める問題:譲渡益×20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)で求め、復興特別所得税を落として20%で計算した値が、最も紛れやすい誤答です。
電卓の持込みと画面の機能を区別する
プロメトリックの共通FAQでは、電卓は持ち込めず、一部の試験・問題では画面の電卓が利用できると案内しています。利用できる設問では電卓アイコンを使います。持込み不可という案内を「画面の電卓も使えない」と読み替えることはできません。公式FAQ
外務員専用ページから案内される受験の流れには、貸与のメモ用紙・筆記具とCBT体験版へのリンクがあります。学習時は、紙に式を書いてから計算し、画面の操作も体験版で確認してください。当日の利用可能な機能は試験画面と試験監督員の案内に従います。
解き直すときは、止まった箇所を1つ残す
- 式が選べない:直接利回りと最終利回りなど、終点の違いを読む。
- 分母が逆:PERの利益と、配当利回りの株価を分けて書く。
- 単位が合わない:額面100円当たりと総額、円と万円、1株と契約全体をそろえる。
- 条件を落とす:税・費用・最低保証金・端数処理の指定を式へ戻す。
計算を間違えた理由が分かったら、別の数字で解いて確認します。証券外務員二種の練習問題で商品業務を選ぶか、上に並べた16問を利回りから順に解いてください。公式だけを見直したいときは、債券と株式指標の表へ戻ってください。
出典・確認日:2026年9月11日。各節の公式資料に基づいて式・制度・試験形式を確認し、数値の例は本記事で独自に設定しています。









