結論: 性質消火10問の本丸は「無機過酸化物だけ注水厳禁」の一点
危険物乙1(危険物取扱者乙種第1類)の性質消火10問で最も問われるのは、消火方法の例外です。第1類 = 酸化性固体は原則として大量の水で冷却消火しますが、無機過酸化物(アルカリ金属の過酸化物)だけは注水厳禁で、乾燥砂や粉末消火剤による窒息消火を使います。ここを取り違えると、安全上も試験上も致命的な失点になります。
| 論点 | 攻略のポイント |
|---|---|
| 第1類の正体 | 酸化性固体。自分は燃えず、酸素を供給して他を激しく燃やす固体 |
| 共通性質 | 不燃性 / 比重1以上 / 強い酸化力 / 加熱・衝撃・摩擦で酸素放出 / 容器は密栓 |
| 消火の原則 | 大量の水で冷却消火(温度を下げて分解と酸素放出を止める) |
| 消火の例外(最頻出) | 無機過酸化物は注水厳禁 → 乾燥砂・粉末消火剤で窒息消火 |
| 代表物質 | 塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・硝酸塩類・過マンガン酸塩類 ほか |
| 免除受験 | 性質消火10問・35分のみ・6問以上で合格 / 学習目安20〜40時間 |
科目免除を使う受験者にとって、乙1は実質「酸化性固体の性質と消火を覚える試験」です。法令も物理化学も出ないぶん、この性質消火10問が合否の全てになります。本記事では、出題の核になる論点を安全に直結する正確さで整理します。
乙1の試験概要・対象物質の全体像は入門記事を参照してください / 免除受験の勉強時間と進め方はこちら
この記事で分かること
- 第1類「酸化性固体」に共通する性質(不燃性・比重1以上・強い酸化力ほか)
- 品名グループ別の代表物質と、それぞれの性状・用途
- 性質消火10問の本丸 — 消火方法が物質で分かれる例外ルール
- 無機過酸化物が注水厳禁になる理由と、段階的な消火手順
- 免除受験で6問以上を取るための論点整理と、向く人・向かない人
広告
第1類「酸化性固体」に共通する性質
性質消火を攻略する出発点は、第1類すべてに共通する性状を押さえることです。個々の物質を覚える前に、この共通項を土台にすると暗記が安定します。
| 共通性質 | 内容 |
|---|---|
| 不燃性 | それ自体は燃えない。あくまで他を燃やす「酸化剤」 |
| 比重1以上 | 水より重い固体。水に沈む |
| 強い酸化力 | 分子内に酸素を含み、酸素を供給して可燃物を激しく燃やす |
| 分解で酸素放出 | 加熱・衝撃・摩擦・他の物質との接触で分解し、酸素を出す |
| 結晶・粉末 | 多くは無色または白色(過マンガン酸塩は紫、重クロム酸塩は橙など例外あり) |
| 密栓・冷暗所 | 容器は密栓し、湿気・直射日光・高温を避けて保管する |
取扱いの基本も共通しています。可燃物・有機物・強酸との混合を避ける、加熱・衝撃・摩擦を与えない、冷暗所で換気して保管するの3点です。第1類は「燃料」ではなく「燃焼を助ける側」だという性格を理解しておくと、なぜこうした注意が必要なのかが腑に落ちます。
なお「比重1以上で水に沈む」「不燃性」という共通性状は、乙4の引火性液体(多くが水より軽く、自分が燃える)とは正反対です。乙4の知識をそのまま流用すると誤るため、性質は学び直すつもりで臨んでください。
品名グループ別の代表物質
第1類は品名ごとに代表物質を覚えるのが効率的です。化学っぽい名前が並びますが、花火・マッチ・肥料・分析試薬など身近な用途を持つ薬品でもあります。
| 品名 | 代表物質 | 性状・用途 |
|---|---|---|
| 塩素酸塩類 | 塩素酸カリウム・塩素酸ナトリウム | 衝撃・摩擦に敏感。花火・マッチ・除草剤 |
| 過塩素酸塩類 | 過塩素酸アンモニウム・過塩素酸カリウム | 強い酸化力。火薬・ロケット推進剤 |
| 無機過酸化物 | 過酸化ナトリウム・過酸化カリウム・過酸化バリウム | 水と反応して酸素発生(注水厳禁) |
| 亜塩素酸塩類 | 亜塩素酸ナトリウム | 漂白・殺菌剤。衝撃に敏感 |
| 臭素酸塩類 | 臭素酸カリウム | 加熱で分解し酸素放出 |
| 硝酸塩類 | 硝酸カリウム・硝酸ナトリウム・硝酸アンモニウム | 肥料・黒色火薬の原料 |
| よう素酸塩類 | よう素酸カリウム | 加熱で分解。酸化剤 |
| 過マンガン酸塩類 | 過マンガン酸カリウム | 紫色結晶。酸化剤・殺菌・分析試薬 |
| 重クロム酸塩類 | 重クロム酸カリウム・重クロム酸アンモニウム | 橙色。めっき・分析・酸化剤 |
色で覚えやすいのは過マンガン酸カリウム(紫)と重クロム酸塩(橙)です。「ほとんどが無色・白の中で、この2つだけ色がつく」と整理すると、色を問う設問で迷いません。無機過酸化物のグループだけは消火法が他と違うので、後の章で別立てして扱います。
性質消火の本丸 — 消火方法は物質で分かれる
ここが乙1学習の核心です。第1類の消火は「物質ごとに正解が変わる」ため、一括りに覚えると本番で失点しやすくなります。
| 物質グループ | 消火方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般の第1類(塩素酸塩類・硝酸塩類・過マンガン酸塩類など) | 大量の水で冷却消火 | 温度を下げて分解と酸素放出を止める |
| 無機過酸化物(過酸化ナトリウム・過酸化カリウムなどアルカリ金属の過酸化物) | 乾燥砂・粉末消火剤で窒息消火(注水厳禁) | 水と反応してさらに酸素と熱を出すため |
第1類の大半は、水をかけて温度を下げる冷却消火が正解です。酸化性固体は熱で分解して酸素を出すので、冷やせば分解が止まり、酸素の供給も止まります。これが「原則は大量注水」の理屈です。
問題は無機過酸化物(アルカリ金属の過酸化物)です。これだけは、水をかけると逆に火災を悪化させます。「第1類は基本は注水だが、無機過酸化物だけは砂」という対比こそが、性質消火10問で最も問われる定番だと押さえてください。なお、乾燥砂・膨張真珠岩(パーライト)・膨張ひる石(バーミキュライト)による窒息消火は、第1類のどの物質にも使える安全策です。迷ったときの共通の逃げ道として覚えておくと整理しやすくなります。
無機過酸化物が注水厳禁になる理由
なぜ無機過酸化物だけ注水厳禁なのか、理由を理解しておくと暗記が崩れません。
過酸化ナトリウムや過酸化カリウムなどアルカリ金属の過酸化物は、水と激しく反応して発熱し、酸素を放出します。火災時にこれへ注水すると、放出された酸素が燃焼を助け、反応熱が温度を上げて、火災をかえって拡大させてしまいます。だから容器には「禁水」の表示が義務づけられています。
実際の消火は段階的に行います。
| 段階 | 対応 |
|---|---|
| 初期 | 炭酸水素塩類を主成分とする粉末消火剤、または乾燥砂・膨張ひる石で窒息消火する |
| 中期以降 | 危険物そのものには注水せず、まだ燃えていない周囲の可燃物に注水して延焼を防ぐ |
ポイントは「無機過酸化物そのものに水をかけない」ことであって、現場で水を一切使わないという意味ではありません。延焼防止のために、燃えていない周囲へ注水することはあります。設問では「無機過酸化物の火災に大量注水する」を誤りとして問うパターンが典型なので、対象物に直接注水しないという核を外さないでください。
消火法の取り違えは独学の最大の落とし穴です。独学か講座かの判断はこちら
免除受験の試験形式と頻出論点
科目免除を使う受験者は、性質消火10問だけの勝負になります。まず形式を正確に押さえておきましょう。
| 受験パターン | 出題数 | 試験時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 新規受験(全3科目) | 35問 | 2時間 | 法令・物化・性消が各60% |
| 乙種他類保有(性消のみ) | 10問 | 35分 | 性消で6問以上(60%) |
乙4をはじめ乙2〜乙6のいずれかを1つでも持っていれば、法令15問と物理化学10問が免除され、性質消火10問・35分だけの受験になります。受験料は5,300円(2024年5月改定後)です。10問中6問以上で合格なので、落とせるのは4問まで。配点が大きいぶん、消火法の例外のような頻出論点を1つ取りこぼすと一気に苦しくなります。時間は35分とたっぷりあるので、スピードより、物質と消火法の対応を正確に思い出せるかが勝負です。
そのうえで、出題されやすい論点を得点源になりやすい順に整理します。
| 頻出度 | 論点 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 最頻出 | 無機過酸化物の注水厳禁 | 水と反応し酸素・熱を発生 → 乾燥砂・粉末で窒息消火 |
| 高 | 第1類の共通性質 | 不燃性・比重1以上・強い酸化力・容器は密栓 |
| 高 | 一般の第1類の消火 | 大量の水で冷却消火(温度を下げて分解を止める) |
| 中 | 取扱い・貯蔵の基本 | 可燃物・有機物・強酸との混合回避、加熱・衝撃・摩擦を避ける |
| 中 | 物質ごとの色・性状 | 過マンガン酸塩=紫、重クロム酸塩=橙、他は無色・白が中心 |
| 中 | 塩素酸塩類の危険性 | 衝撃・摩擦に敏感、可燃物との混合で爆発のおそれ |
この6論点を「無機過酸化物の例外」を軸に串刺しで覚えるのが、10問対策の近道です。共通性質という土台の上に、消火の原則と例外を乗せ、物質ごとの色や危険性で枝葉を足していく順序が頭に残ります。
この対策が向く人・向かない人
性質消火に絞った本記事のアプローチが合うかどうか、誠実に仕分けます。
| 向く人 | 向かない人 |
|---|---|
| 乙4等を持ち科目免除で性消10問だけ受ける人 | 乙4すら未取得(まず乙4を先に取るのが定石) |
| 暗記中心の学習を品名グループで進めたい人 | 化学反応の理屈まで深掘りしたい人(試験範囲を超える) |
| 消火の例外を正確に押さえて確実に6問取りたい人 | 第1類物質と無縁で、手当目的だけの人 |
| 短期間で効率よく仕上げたい免除受験者 | ゼロから3科目を新規受験する人(法令・物化の対策も別途必要) |
新規受験で3科目を受ける人は、本記事の性質消火に加えて、法令15問と物理化学10問の対策が必要です。その場合の進め方は勉強時間の記事で扱います。免除受験者は、本記事の論点を押さえれば性質消火10問の準備はおおむね整います。
まとめ: 例外を制する者が性質消火を制する
危険物乙1の性質消火10問は、共通性質という土台と、消火の例外という頂点を押さえれば形になります。
- 第1類 = 酸化性固体。不燃性・比重1以上・強い酸化力・加熱や衝撃で酸素放出・容器は密栓
- 代表物質は品名グループで把握(塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・硝酸塩類・過マンガン酸塩類ほか)
- 消火の原則は大量の水で冷却消火(温度を下げて分解と酸素放出を止める)
- 最頻出の例外 — 無機過酸化物(アルカリ金属の過酸化物)は注水厳禁。乾燥砂・粉末消火剤で窒息消火
- 無機過酸化物は水と反応して酸素・熱を発生。容器に「禁水」表示、初期は窒息消火・中期以降は周囲の可燃物へ注水
- 免除受験は性質消火10問・35分・6問以上で合格、受験料5,300円、学習目安20〜40時間
「基本は注水、無機過酸化物だけは砂」という一点を軸に、共通性質と代表物質をぶら下げて整理すれば、性質消火10問は十分に得点源にできます。
免除受験の勉強時間・勉強法を確認する / 乙1の合格率・難易度を乙4と比較する
出典
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 危険物取扱者試験 — 試験科目・合格基準・科目免除・受験料5,300円
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 乙種第1・2・3・5・6類 公表問題(PDF) — 性質消火の出題範囲・形式
- 消防法、消防法施行令、消防法別表第一 — 第1類危険物(酸化性固体)の品名・性状・貯蔵取扱基準・「禁水」表示
- 危険物保安技術協会(KHK)危険物関係用語の解説 — 第1類の性質・消火に関する一般的解説







































































































