結論: 公表66〜71%は科目免除込みの数字、新規受験の体感は30〜40%台
危険物乙種第1類 (以下「乙1」) の合格率は、見る数字によって印象が大きく変わります。結論から整理します。
| 区分 | 合格率の目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 公表合格率 (全受験者) | 約66〜71% | 科目免除受験者を多く含む混合データ |
| 科目免除受験 (性消10問のみ) | 60〜70%台 | 対策範囲が狭く合格しやすい |
| 新規3科目受験ベース (推計) | 30〜40%台 | 法令・物化・性消すべてが必要 |
公表値の66〜71%だけを見ると「乙1は簡単」と誤解しがちですが、これは性質消火10問だけで受ける科目免除組を多く含むためです。法令・物理化学を含めて3科目を受ける新規受験者の体感は、これよりかなり厳しくなります。難易度は「誰として受けるか」で決まる、というのが乙1合格率の本質です。
数値は年度・地域により変動するため、本記事では幅で示します。正確な最新値は消防試験研究センターの試験実施状況で確認してください。
なぜ公表合格率は高く見えるのか
乙1の公表合格率が高めに出る理由は、受験者構成にあります。
危険物乙種は、1つでも乙種免状を持っていると他の類を受けるとき 法令と物理学・化学が免除 されます。乙1の受験者には、すでに乙4などを持っていて性質消火10問だけを受ける人が多く含まれます。この層は対策範囲が狭く合格しやすいため、全体の合格率を押し上げます。
| 受験者層 | 受ける科目 | 合格しやすさ |
|---|---|---|
| 科目免除受験者 (乙種保有) | 性質消火10問のみ | 範囲が狭く合格しやすい |
| 新規受験者 (初めての危険物) | 法令15 + 物化10 + 性消10 | 3科目すべてで足切り回避が必要 |
つまり公表66〜71%という数字は、「乙4を持った人が性質消火だけ追加で受かった合格」を多く含みます。これから初めて危険物に挑む人が同じ感覚で構えると、法令と物化の負担に足をすくわれます。
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乙1の難易度を決める「三重の足切り」
乙1に限らず危険物乙種の難しさは、合格基準が3科目それぞれ60%以上という三重基準にある点です。
| 科目 | 出題数 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 9問以上 (60%) |
| 基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10問 | 6問以上 (60%) |
| 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 | 6問以上 (60%) |
合計35問・2時間ですが、合計点では合否は決まりません。1科目でも60%を割ると、他がどれだけ高得点でも不合格です。たとえば法令15問満点・性質消火10問満点でも、物理化学が5問 (50%) なら落ちます。この「弱点科目を作れない」構造が、乙1を含む危険物試験の実質的な難しさです。
乙1と乙4の難易度比較
乙1と乙4を新規3科目受験で比べると、難易度は近い水準です。違いは性質消火10問にあります。
| 比較軸 | 乙1 (酸化性固体) | 乙4 (引火性液体) |
|---|---|---|
| 法令15問 | 全6類共通 (差なし) | 全6類共通 (差なし) |
| 物理化学10問 | 全6類共通 (差なし) | 全6類共通 (差なし) |
| 性質消火10問 | 酸化性固体の品目+消火の使い分け | 引火性液体の品目+引火点暗記 |
| 暗記の質 | 消火法の例外 (無機過酸化物) が多い | 品目数が多く引火点の暗記が中心 |
| 教材の量 | 乙12356セット教材中心 | 専用教材が非常に豊富 |
| 受験機会 | 乙4より開催回数が少ない地域あり | 全国で開催回数が多い |
法令と物理化学は全6類で共通問題のため、ここに乙1と乙4の差はありません。差が出るのは性質消火10問で、乙1は「第1類は注水だが無機過酸化物だけは砂」のような物質ごとの消火の例外を正確に区別する力が問われます。暗記の量より暗記の正確さで差がつくのが乙1の性質消火です。
教材の入手しやすさは乙4が圧倒的に上で、乙1は乙1単独教材より乙種12356をまとめて扱う教材が中心になります。
科目免除の効果 — 性消10問35分に絞る
乙1の難易度を語るうえで外せないのが科目免除です。乙4など乙種を1つでも持っていれば、乙1は性質消火10問・35分だけの受験になります。
| 受験パターン | 出題数 | 試験時間 | 学習時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 新規受験 (全3科目) | 35問 | 2時間 | 50〜80時間 |
| 科目免除受験 (性消のみ) | 10問 | 35分 | 20〜40時間 |
科目免除を使うと、法令15問と物理化学10問の対策が丸ごと不要になります。残るのは酸化性固体の性質・火災予防・消火だけ。学習範囲が1/3以下に縮むため、乙4合格者が短期間で乙1を重ねられます。乙1を受ける人の多くがこのルートを使うからこそ、公表合格率が高く出るわけです。
逆に言えば、初めての危険物として乙1を選ぶのは効率が悪い選択です。同じ法令・物化を勉強するなら、求人も教材も多い乙4を先に取り、その免除で乙1を重ねるほうが合理的です。
科目免除を踏まえた独学・講座の選び方は専用記事で整理しています
合格に必要な勉強時間の目安
乙1の学習時間は、新規受験か科目免除かで倍以上変わります。
| 受験者像 | 学習時間の目安 | 重点 |
|---|---|---|
| 新規受験 (初めての危険物) | 50〜80時間 | 法令・物化・性消をバランスよく |
| 科目免除 (乙種保有・文系) | 30〜40時間 | 酸化性固体の品目+消火の使い分け |
| 科目免除 (乙種保有・化学に強い) | 20〜30時間 | 性質消火10問の暗記に集中 |
科目免除の場合、酸化性固体の代表物質 (塩素酸塩類・無機過酸化物・硝酸塩類・過マンガン酸塩類等) と、物質ごとの消火法を覚えきれるかが学習時間を左右します。特に無機過酸化物の「注水厳禁・乾燥砂で窒息消火」という例外を、他の第1類 (大量注水で冷却) と混同しないことが得点の鍵です。
つまずきやすいポイント
乙1で失点しやすい論点を整理します。これらは性質消火10問で繰り返し問われます。
| つまずき | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 消火法の取り違え | 無機過酸化物に注水すると悪化するのに、一般の第1類と混同 | 「第1類は注水、無機過酸化物だけ砂」と対で暗記 |
| 不燃性なのに危険という直感のズレ | 自分は燃えないのに激しく燃やす、という性質が腑に落ちない | 「酸素を供給する側」と役割で理解する |
| 物理化学の足切り (新規受験) | 文系受験者が計算・化学反応で60%を割る | 物化に学習時間の3割以上を配分 |
| 品名の混同 | 塩素酸塩・過塩素酸塩・亜塩素酸塩などの名前が紛らわしい | 代表物質と用途 (花火・火薬・肥料) で紐づける |
乙1固有の最大の罠は消火法の取り違えです。第1類はおおむね大量注水で冷却消火しますが、無機過酸化物 (アルカリ金属の過酸化物) は水と反応して酸素と熱を出すため逆効果。この例外を正確に押さえることが、乙1の性質消火を確実に超えるための中心戦略になります。
受験前に確認したい難易度の現実
乙1の難易度について、誤解されやすい点を誠実に整理します。
- 公表合格率66〜71%を真に受けない — 科目免除組を多く含む混合データで、新規受験の体感とは別物
- 乙1単独で就職に強い資格ではない — 求人は乙4が中心、乙1は積み上げや業務上の必要性で生きる
- 法令・物化は乙4と全く同じ問題 — 新規なら難易度は乙4と近い、楽な抜け道ではない
- 科目免除なら確かに楽 — ただし前提として別の乙種 (乙4等) の合格が必要
「乙1は合格率が高いから簡単」という入口での誤解が、新規受験者の油断につながります。実態は「乙4を持った人にとっては楽、ゼロから受けると乙4並み」というのが正確な理解です。
まとめ: 乙1の難易度は「誰として受けるか」で決まる
危険物乙1の合格率は、公表ベースで約66〜71%と高めに見えますが、その多くは性質消火10問だけを受ける科目免除受験者です。
- 公表合格率: 約66〜71% (科目免除込み、年度変動)
- 新規3科目受験ベース: 30〜40%台の推計、乙4と近い難易度
- 科目免除受験: 性消10問35分のみ、20〜40時間で対応可能
- 乙1固有の壁: 無機過酸化物の注水厳禁という消火法の例外
- 三重基準: 3科目それぞれ60%以上、弱点科目を作れない
これから危険物を始めるなら乙4が先、乙1はその科目免除を使って重ねるのが効率的という結論になります。乙1単独の難易度を過小評価せず、自分が新規受験者なのか科目免除受験者なのかを踏まえて対策を組んでください。
乙1の対象物質・試験概要を確認する / 乙1は独学か通信講座かを判断する
出典
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 試験実施状況 — 類別の受験者数・合格者数・合格率 (年度別)
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 危険物取扱者試験 — 試験科目・合格基準・科目免除・受験料
- 消防法、消防法施行令 — 第1類危険物 (酸化性固体) の区分







































































































