結論:複線図は「配置→接地側→非接地側→スイッチ渡り→色と圧着」の5ステップで書く
第一種電気工事士の技能試験で出される問題用紙には、配線が単線図(1本の線で簡略化した図)で描かれています。これを、実際の電線1本ずつまで描き起こした複線図に変換してから施工するのが、技能試験の基本の流れです。
複線図を書く手順は、難しく考える必要はありません。次の5ステップを順番にこなすだけです。
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 器具と電源を単線図どおり配置 | まず配置だけ写す。線はまだ引かない |
| 2 | 接地側(白)を負荷・コンセントへ | スイッチには直接つながない |
| 3 | 非接地側(黒)をスイッチ・コンセントへ | 負荷へはスイッチ経由でつなぐ |
| 4 | スイッチと対応する負荷を結線 | 3路・4路やパイロットランプはここで処理 |
| 5 | 電線の色・本数・圧着マークを記入 | 第一種は変圧器・CTなど高圧側も描く |
この記事では、複線図とは何かを単線図との違いから整理し、5ステップの書き方、第一種特有の高圧要素(変圧器・CT・KIP)、3路4路やパイロットランプの描き方、複線図を時短する考え方、ありがちなミスまでを、学習用の作図解説としてまとめます。技能試験の全体像や候補問題の対策手順から先に把握したい人は、専用記事も合わせて確認してください。
第一種電気工事士 技能試験の候補問題対策・練習法を確認する →
なお、ここで扱うのはあくまで作図(図の描き方)の学習解説です。実際の施工や電気設備の取り扱いは感電・短絡の危険があるため、練習でも電源を入れた状態の配線には触れないなど、安全面の基本は別途守ってください。
複線図とは:単線図を「実際の電線」まで描き起こした図
複線図を理解する近道は、単線図との役割の違いを押さえることです。
| 図の種類 | どんな図か | 試験での位置づけ |
|---|---|---|
| 単線図 | 配線を1本の線でまとめて描いた簡略図 | 問題用紙にこの形で示される |
| 複線図 | 電線1本ずつ・色・接続点まで描いた図 | 自分で単線図から起こす |
単線図は、配線の全体像を見やすくするために線をまとめています。たとえば「電源からスイッチを経て電灯へ」という回路も、単線図では1本の線で表されます。しかし実際には、接地側の白線・非接地側の黒線・スイッチと電灯をつなぐ渡り線など、複数の電線が走っています。これを1本ずつ描き分けたものが複線図です。
複線図を書く目的は、どの線をどこへつなぐかを、施工前に確定させることです。技能試験は欠陥が一つでもあれば不合格になる方式なので、結線の取り違えは致命傷になります。頭の中だけで組み立てると、似た色の線やスイッチの渡りで迷いが出ます。複線図を先に描けば、手を動かす段階では「図のとおりにつなぐだけ」になり、ミスが大きく減ります。
複線図を書くこと自体は採点されません。書かずに合格する人もいます。それでも多くの教材が複線図を勧めるのは、欠陥を未然に防ぐ効果が大きいからです。技能の合格率や「なぜ学科を抜けても落ちるのか」は、合格率の記事で整理しています。
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ステップ1〜2:器具を配置し、接地側(白)を負荷とコンセントへ
ここからは、複線図を書く5ステップを順に見ていきます。まずは土台づくりの2ステップです。
ステップ1は、単線図どおりに器具と電源を配置することです。電源・電灯などの負荷・スイッチ・コンセント・端子台などを、単線図と同じ位置関係で紙に置きます。この段階では線は引かず、器具の配置だけを写し取ります。位置を単線図に合わせておくと、あとで線を引くときに混乱しません。
ステップ2は、接地側(白)を引くことです。一般に接地側(中性線)を白で描きます。白線のつなぎ先には決まったルールがあります。
| 接地側(白)のつなぎ先 | つなぐ | つながない |
|---|---|---|
| 電灯などの負荷 | ○ 直接つなぐ | — |
| コンセント | ○ 直接つなぐ | — |
| スイッチ(点滅器) | — | × つながない |
ポイントは、接地側の白はスイッチには直接つながないことです。白線は負荷とコンセントへ直接向かいます。電線が分岐したり他の線と接続したりする箇所は、接続点として塗りつぶして示します。この接続点が、あとでリングスリーブや差込形コネクタでつなぐ箇所になります。
接地側・非接地側という考え方は、第二種電気工事士の技能と共通です。低圧の基本に自信がない人は、先に第二種で手の基礎を作る方が、第一種までの距離が縮みます。
ステップ3〜4:非接地側(黒)とスイッチの渡りを描く
土台ができたら、回路を成立させる2ステップに進みます。
ステップ3は、非接地側(黒)を引くことです。非接地側の黒線は、点滅器(スイッチ)とコンセントへつなぎます。負荷へ直接はつながず、スイッチを経由させるのが基本です。
| 非接地側(黒)のつなぎ先 | つなぐ | つながない |
|---|---|---|
| スイッチ(点滅器) | ○ 直接つなぐ | — |
| コンセント | ○ 直接つなぐ | — |
| 電灯などの負荷 | — | × 直接はつながない(スイッチ経由) |
ここで、コンセントには白・黒の両方が来ることに気づきます。コンセントは常に電気が来ている必要があるため、接地側・非接地側の両方を直接つなぎます。一方スイッチは、非接地側だけが来て、もう一方は負荷へ渡ります。この違いが、複線図を読み解くうえでの軸になります。
ステップ4は、スイッチと対応する負荷を結ぶことです。各スイッチから、それが制御する電灯などの負荷へ渡り線を引きます。スイッチが複数ある場合は、どのスイッチがどの負荷を担当するか、施工条件をよく読んで対応させます。
| 結線箇所 | 描き方の要点 |
|---|---|
| 単独スイッチと負荷 | スイッチの片側から負荷へ1本渡す |
| 複数スイッチ | スイッチごとに担当する負荷へ渡す。取り違え注意 |
| 3路・4路スイッチ | 2箇所以上から同じ負荷を点滅させる結線にする |
| パイロットランプ | 点灯方式(常時点灯・同時点滅など)に合わせる |
3路・4路スイッチやパイロットランプの描き方は、迷いやすいので次の見出しで詳しく扱います。
3路・4路スイッチとパイロットランプの描き方
スイッチの渡りで特につまずきやすいのが、3路・4路スイッチとパイロットランプです。考え方を整理しておきます。
3路・4路スイッチは、1つの照明を複数の場所から点滅させるための仕組みです。
| スイッチ | 役割 | 結線の考え方 |
|---|---|---|
| 3路スイッチ | 2箇所から点滅させる | 2つの3路スイッチを渡り線(2本)でつなぐ |
| 4路スイッチ | 3箇所以上から点滅させる | 2つの3路スイッチの間に4路スイッチを挟む |
3路スイッチは、階段の上下など2箇所で同じ照明を操作したいときに使います。4路スイッチは、3路スイッチだけでは足りない3箇所以上の操作を実現するために、3路と3路の間に入れます。複線図では、どの端子から渡り線が出るかを正確に描くことが、欠陥を避ける鍵になります。
パイロットランプ(確認表示灯)は、つなぎ方で点灯のしかたが変わります。
| 点灯方式 | 動き | 結線のつなぎ方 |
|---|---|---|
| 常時点灯 | スイッチの入切に関係なく常に点灯 | 電源に並列につなぐ |
| 同時点滅 | スイッチと連動して点灯・消灯 | 負荷に並列につなぐ |
| 異時点滅 | スイッチが切のとき点灯、入で消灯 | 負荷と入れ替わる形でつなぐ |
施工条件で「常時点灯」「同時点滅」のどれかが指定されるので、その指定に合わせて並列のつなぎ先を選びます。ここを読み違えると、回路としては動いても施工条件と異なる作品になり、欠陥として扱われることがあります。これらは文章だけだと頭に入りにくい領域なので、テキストの図や施工写真と合わせて手を動かすのが確実です。
ステップ5と第一種特有の高圧要素:変圧器・CT・KIP
複線図の仕上げがステップ5です。各電線の色と本数を記入し、リングスリーブで接続する箇所には圧着マーク(刻印の種類)を書き込みます。差込形コネクタで接続する箇所も、どのコネクタを使うか分かるようにしておきます。ここまで描くと、施工は図のとおりに進めるだけになります。
そして、第二種にはない第一種ならではの難所が、高圧側の要素です。第一種では、自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)を想定した課題が出るため、低圧の複線図に加えて次の要素を描き起こす必要があります。
| 第一種で増える要素 | 複線図での扱い |
|---|---|
| 変圧器 | 端子台を変圧器に見立てる。一次側(高圧)・二次側(低圧)を取り違えない |
| CT(計器用変流器) | 端子台で代用。電源側のKIPを通してから次へつなぐ向きに注意 |
| VT(計器用変圧器) | 端子台で代用した結線として描く |
| KIP線 | 高圧機器内配線用の電線。被覆が硬く、複線図でも経路を明確にする |
| CVV など | 制御用ケーブル。芯数と接続先を正確に描き分ける |
単線図の中で「この端子台は変圧器の代用」「ここはCT」と読み取れることが、第一種の複線図の出発点です。読み取れないと、一次側と二次側を逆に描いたり、CTを通す向きを誤ったりして、複線図の段階で欠陥の種をまいてしまいます。
逆に言えば、高圧部分はパターンが限られています。候補問題10問の高圧結線を繰り返し描いておけば、本番でどれが出ても落ち着いて起こせます。高圧の結線イメージや候補問題ごとの難所は、技能対策の記事で具体的に整理しています。
第一種電気工事士 技能試験の対策・候補問題の攻略を確認する →
第一種は試験合格と免状交付が別である点も、計画段階で押さえておきたいところです。
複線図を省略・時短する考え方
複線図を書くこと自体は採点されないため、「どこまで書くか」「書かずに済ませられるか」は人によって判断が分かれます。考え方を整理します。
| アプローチ | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 毎回フルで複線図を書く | 初学者、接続に不安がある人 | 3〜5分で書けるよう反復しておく |
| 接続点と圧着マークだけ要点を書く | 候補問題を作り込んだ人 | 渡り線の取り違えに注意 |
| 複線図を書かず施工する | 10問を体に入れたベテラン層 | 欠陥は一つで不合格。リスクは高め |
時短の方向性は2つあります。1つは、書く速さを上げることです。電源・負荷・スイッチを先に配置し、接地側→非接地側→スイッチの渡り、の順で線を足していくと手が止まりにくくなります。複数色のペンを使うと、色分けの確認も速くなります。候補問題10問を図を見ずに3〜5分で書けるところまで反復すれば、本番で複線図に時間を取られて施工が圧迫される心配が減ります。
もう1つは、書く量を絞ることです。10問を何周も作って結線が頭に入っている人なら、毎回フルで描かず、接続点と圧着マーク、迷いやすい高圧側だけをメモする形でも回せます。ただし、これは作り込んだ人向けの省略です。欠陥が一つでも不合格になる以上、不安があるなら省略せずフルで描く方が安全です。
時間配分全体の中で複線図にどれだけ割くかは、技能の60分をどう組むかとセットで考えると見通しが立ちます。勉強時間の配分は専用記事で逆算しています。
複線図でありがちなミス
最後に、複線図で起きやすいミスを表にまとめます。複線図のミスは、そのまま施工の欠陥につながるので、練習段階で潰しておきます。
| ありがちなミス | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 接地側(白)をスイッチにつないでしまう | 回路が成立せず欠陥になる | 白は負荷とコンセントだけ、と固定して覚える |
| コンセントに白か黒の片方しか引かない | コンセントが機能しない | コンセントは白・黒両方、と確認する |
| スイッチと負荷の対応を取り違える | 別の照明が点く施工になる | 施工条件を読み、担当を1つずつ確認 |
| パイロットランプの点灯方式を誤る | 指定と異なる動きになり欠陥扱い | 常時点灯=電源並列、同時点滅=負荷並列 |
| 変圧器の一次側・二次側を逆に描く | 高圧結線が成立しない | 端子台のどちらが高圧側か先に確定 |
| 接続点(塗りつぶし)を描き忘れる | どこをつなぐか分からなくなる | 線が交わる接続箇所は必ず塗る |
| 圧着マーク(刻印)を書かない | リングスリーブの選定を誤る | 接続点ごとに刻印の種類を記入 |
これらは、複線図を書く習慣があれば施工前に気づけるものばかりです。逆に、頭の中だけで組み立てると、本番の緊張の中で取り違えが起きやすくなります。独学で複線図と高圧の結線が言葉だけでは入りにくい場合は、図や動画つきの教材を併用すると理解が早まります。
学習ペースを一人で組むのが不安な人や、変圧器・CTの結線が映像でないとイメージできない人は、通信講座も比較対象に入れて構いません。動画で分かった後、候補問題を実際に作るところまで進めるのがポイントです。
ぴよきちメモ
複線図は、特別な才能がいる作業ではありません。やることは決まっていて、配置→接地側(白)→非接地側(黒)→スイッチの渡り→色と圧着マーク、の順で線を足していくだけです。白は負荷とコンセント、黒はスイッチとコンセント。この2つを固定で覚えておけば、低圧部分は迷いません。
第一種で差がつくのは、変圧器・CT・VT・KIPといった高圧側です。ここは単線図の読み取りから始まるので、「この端子台は何の代用か」を見抜く練習を、候補問題10問で繰り返しておきます。
複線図を書くか書かないかは自由ですが、欠陥が一つでも不合格になる試験です。不安があるなら、3〜5分で書ける状態まで反復して、施工は図のとおりに進める。この型を作っておけば、本番で手が止まらず、欠陥を未然に防げます。最新の候補問題・施工条件・欠陥の判断基準は、受験する年に公式の公表資料で確認してください。
出典・参考
- 一般財団法人 電気技術者試験センター — 第一種電気工事士の技能試験の候補問題
- 一般財団法人 電気技術者試験センター — 令和8年度第一種電気工事士技能試験候補問題の公表について
- 一般財団法人 電気技術者試験センター — 第一種電気工事士試験
- 経済産業省 — 電気工事士

















































































































