消防設備士4類を受けようと思って最初につまずくのが「甲種と乙種、どっちを申し込めばいいのか」です。結論から言うと、自動火災報知設備などの工事に関わる(関わりたい)なら甲4、点検・整備の現場で働ければ十分なら乙4——この軸で選べばまず外しません。違いは細かく数えればいくつもありますが、選択に効くのは「工事ができるか(業務範囲)」「誰でも受けられるか(受験資格)」「製図があるか(試験内容)」の3つだけです。
まず、判断に必要な差を1枚にまとめます。
甲4と乙4の違い早見表
| 項目 | 甲種4類 | 乙種4類 |
|---|---|---|
| できる仕事 | 工事+整備+点検 | 整備+点検のみ |
| 着工届の提出 | できる | できない |
| 受験資格 | 必要(電工2種・指定学科卒 等) | 不要(誰でも受験可) |
| 筆記試験 | 45問 | 30問 |
| 実技試験 | 鑑別等5問+製図2問 | 鑑別等5問(製図なし) |
| 試験時間 | 3時間15分 | 1時間45分 |
| 受験料 | 6,600円 | 4,400円 |
| 合格率(令和7年度) | 34.5% | 34.0% |
| 受験者数(令和7年度) | 21,819人 | 8,047人 |
(数値は消防試験研究センター「試験科目及び問題数」「試験の方法」「試験実施状況」より。受験料は令和6年5月1日改定後の額)
見落とされがちなのが受験者数です。4類では甲4の受験者が乙4の約2.7倍います。受験資格というハードルがあるのに甲4へ人が集まるのは、実務の求人で価値が大きいのが「工事までできる甲種」だからと考えられます。以下、表の中身を「どちらを選ぶか」の判断に直結する順で掘り下げます。
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違い1: 甲4は「工事」ができる、乙4は整備・点検まで
甲種と乙種を分ける核心は、消防用設備の工事に着手できるかどうかです(消防法第17条の5・第17条の6)。
| 甲種4類 | 乙種4類 | |
|---|---|---|
| 工事 | できる | できない |
| 整備 | できる | できる |
| 点検 | できる | できる |
| 着工届の提出 | できる | できない |
ここでいう「工事」は、自動火災報知設備や非常警報設備などを新しく設置したり、設備の大きな改修をしたりする作業を指します。工事に着手する10日前までに消防長・消防署長へ提出する着工届を出せるのは甲種だけ(消防法第17条の14)で、これは乙種では代われない独占業務です。
実務でこの差が効くのは、たとえば設備工事会社・電気工事会社で「自分が責任者として現場の工事を進める」立場になるときです。逆に、ビルメンテナンスや点検会社で既設設備の点検・整備が中心なら、乙種でも仕事は回ります。「将来工事側に回る可能性があるか」を先に考えると、甲乙の選択はほぼ決まります。
違い2: 甲4だけ受験資格が要る、乙4は誰でも受けられる
2つ目の差は申込みの段階で出ます。乙種は受験資格がなく誰でも申し込めますが、甲種は受験資格を満たし、それを証明する書類を添えないと受け付けてもらえません。
甲種の受験資格にはいくつかルートがあり、代表的なのは次の4系統です。
| ルート | 内容 | 証明書類 |
|---|---|---|
| 国家資格 | 第一種・第二種電気工事士、第一〜三種電気主任技術者 など | 免状のコピー |
| 学歴 | 大学・短大・高専で機械・電気・工業化学・土木・建築に関する学科を修めて卒業 | 卒業証明書 等 |
| 実務経験 | 乙種消防設備士免状の交付後、2年以上の整備の経験 | 実務経験証明書 |
| 技術士 | 技術士第2次試験の合格 | 合格証明書 等 |
特に多いのが「電工2種を取ってから甲4を受ける」ルートで、後述のとおり受験資格になるだけでなく科目免除にもつながります。自分がどのルートで受けられるかは 消防設備士甲4 受験資格3ルート で確認しておくと、申込みでつまずきません。
「資格がまだ何もない」状態なら、乙4を先に取って実務経験で甲種に進む、あるいは電工2種を先に取る、という選択肢になります。ただし乙種消防設備士の実務経験ルートで甲種を受けるには免状交付後2年以上の整備経験が必要です。乙4合格後すぐには甲4の受験資格が得られないため、急ぐなら電工2種経由のほうが早いケースが多いです。時間軸を確認して計画を立ててください。
違い3: 試験は甲4が問題数1.5倍+製図つき
3つ目は試験そのものの差です。科目別に並べると、量の差がはっきり見えます。
| 試験科目 | 甲種4類 | 乙種4類 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 15問(共通8+類別7) | 10問(共通6+類別4) |
| 基礎的知識(電気) | 10問 | 5問 |
| 構造・機能・工事・整備 | 20問(電気12+規格8) | 15問(電気9+規格6) ※工事は範囲外 |
| 筆記合計 | 45問 | 30問 |
| 実技 | 鑑別等5問+製図2問 | 鑑別等5問のみ |
| 試験時間 | 3時間15分 | 1時間45分 |
(消防試験研究センター「試験科目及び問題数」より)
合格基準は甲種・乙種とも共通の考え方で、筆記は各科目40%以上かつ全体60%以上、実技は60%以上。どこか1科目でも40%を割ると、他がよくても不合格になる足切り方式です。甲4で必要な正答数を1問単位で確認したい人は 消防甲4 合格基準の読み方 を、受験資格の判定手順は 消防甲4 受験資格の3ルート を参照してください。
そして甲種だけにある製図は、感知器や受信機、配線を図面上に正しく配置・結線する記述式の問題で、暗記だけでは点が伸びにくい分野です。自動火災報知設備の感知器の種別ごとの設置ルールや配線方式を理解していないと手が止まります。だからこそ甲種では製図対策が合否を分けると言われます。具体的な進め方は 消防設備士甲4 製図対策 を参照してください。
合格率はどちらも3割台。ただし「同じ難しさ」ではない
消防試験研究センターの試験実施状況から、直近3年度の受験者数と合格率を並べます。
| 年度 | 甲4 受験者数 | 甲4 合格率 | 乙4 受験者数 | 乙4 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年度(2023) | 19,205人 | 32.3% | 8,384人 | 34.4% |
| 令和6年度(2024) | 19,767人 | 34.0% | 7,448人 | 31.2% |
| 令和7年度(2025) | 21,819人 | 34.5% | 8,047人 | 34.0% |
(消防試験研究センター「試験実施状況」より)
数字はほぼ並んでいますが、読み方には注意が要ります。
- 母集団が違う — 甲4の合格率は、電工2種や指定学科卒といった受験資格を満たした人たちの中での3割台。誰でも受けられる乙4の3割台と同列には比べられません
- 量と質の負荷が違う — 筆記は45問と1.5倍、そこに記述式の製図2問が加わるのが甲4。試験時間も3時間15分と長丁場です
- どちらも「3人に1人」しか受からない — 乙4も決して簡単ではなく、無対策で受かる試験ではありません
実質的な難易度は甲4が一段上、というのが妥当な評価です。必要な勉強時間の目安は 消防甲4の勉強時間100時間の内訳 で、乙4側の難易度分析は 消防乙4 難易度の正体 で確認できます。
受験料の差は2,200円
受験料は甲種6,600円・乙種4,400円です(令和6年5月1日改定。改定前は甲種5,700円・乙種3,800円)。差の2,200円は、製図を含む試験規模と工事権限ぶんの価値と考えると分かりやすいです。
申込みは書面のほかインターネットによる電子申請が利用でき、手数料の支払いはクレジットカード・コンビニ・ペイジー等に対応しています。試験日程と受付期間は受験する都道府県(支部)ごとに異なるので、公式サイトの試験日程一覧で自分の地域を確認してください。テキスト代や免状交付まで含めた総額は 消防甲4 取得費用の内訳 で整理しています。
電工2種を持っているなら、免除を使って甲4直行が定番
第一種・第二種電気工事士の免状があると、甲4では受験資格になるだけでなく、申請により試験の一部免除が受けられます。
| 免除なし(一般受験) | 電気工事士免状で免除申請 | |
|---|---|---|
| 筆記 | 45問 | 23問 (基礎的知識10問+構造・機能等の電気12問が免除) |
| 実技 | 鑑別等5問+製図2問 | 鑑別等4問+製図2問 (鑑別等1問免除) |
| 試験時間 | 3時間15分 | 2時間30分 |
(消防試験研究センター「試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表(甲種)」より)
免除は申請制なので、使うかどうかは選べます。合否は免除を受けた以外の問題で判定されるため、電気が得意な人は「得点源を残すためにあえて免除を使わない」判断もあり得ます。免除の使いどころと重複分野の活かし方は 電工2種から消防設備士甲4へ進む手順 で詳しく整理しています。
年収・手当はどう違う?
どちらを取るか考えるとき、収入面の差も気になるところです。消防設備士全体の年収相場は約400万〜500万円が目安で、工事まで担える甲種のほうが、点検・整備が中心の乙種より年収・手当ともに高くなる傾向があります。工事権限ぶんだけ任される仕事の幅が広がるためです。
資格手当の相場は、甲種で月5,000円前後、乙種で月1,000〜3,000円程度が一般的です(勤務先の規定により異なります)。月5,000円の手当が付けば年6万円の上乗せになり、甲種の受験料6,600円は1年かからず回収できる計算です。
ただし手当や年収は資格の種類だけで決まるわけではなく、勤務先・地域・実務経験で大きく変わります。上記は一般的な目安としてとらえ、具体的な金額は応募先の求人票や就業規則で確認してください。職種ごとの活かし方は 消防甲4 仕事・転職での活かし方 で整理しています。工事に関われる甲種は手当・年収でも有利になりやすく、これも「将来工事側に回る可能性があるなら甲4」という判断を後押しする材料になります。
結局どちらを選ぶか
- 工事会社・電気工事会社で工事に関わる(関わりたい) → 迷わず甲4。乙4を経由する時間がもったいない
- すでに電工2種を持っている → 受験資格と科目免除を活かして甲4に直行するのが効率的
- 点検・整備が中心のビルメン/点検会社 → 乙4で十分。必要になってから甲4を足せばよい
- 資格が何もなく、まず受かる経験がほしい → 受験資格不要の乙4から。ただし乙4経由で甲4に進むには免状交付後2年の実務経験が要るので、急ぐなら電工2種を先に取る方が早い
申込み前にやりがちな失敗
- 「甲種も誰でも受けられる」と思い込み、申込みで弾かれる — 甲種は受験資格と証明書類が必須。まず自分のルートを確定させてから申し込む
- 「とりあえず乙4」で受けたが、就職先で工事を任され甲4が必要になった — 工事に関わる可能性が少しでもあるなら、最初から甲4を視野に入れる。乙4からの実務経験ルートは2年かかる
- 日程・受付期間を全国共通だと思い込む — 試験日程は都道府県(支部)ごとに違い、受付期間を逃すと次回まで数か月待ちもある。申込みは受付期間を先に押さえる
- 甲種を受けるのに製図を後回しにする — 製図は筆記の知識が土台。学習開始から1か月後を目安に筆記と並行して図面を描く練習を始める。直前1か月からでは製図の反復量が確保できない
まとめ
甲4と乙4の違いは、「工事ができるか」「受験資格が要るか」「製図があるか」の3点に集約されます。合格率はどちらも3割台ですが、問題数1.5倍+製図の甲4が実質的には一段難しい試験です。それでも受験者の多数派が甲4を選ぶのは、工事権限の実務価値が大きいからでしょう。工事に関わるなら甲4、点検・整備中心なら乙4、という軸で選べば大きく外しません。
次の一手は、自分が甲4を受けられるかどうかの確認です。電工2種や指定学科に当てはまるなら甲4に直行できます。受けられる前提なら、まずは自分の今の実力を測ってみてください。
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出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター 受験資格 — 乙種は受験資格不要・甲種の受験資格詳細
- 同 試験科目及び問題数 — 甲種45問・乙種30問の科目別内訳、実技の構成
- 同 試験の方法 — 試験時間(甲種3時間15分・乙種1時間45分)・合格基準
- 同 試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表(甲種) — 電気工事士免状による免除内容
- 同 試験実施状況(令和7年4月〜令和8年3月)・同(令和6年4月〜令和7年3月) — 甲4・乙4の受験者数・合格率
- 同 中央試験センター 試験手数料改定のお知らせ — 受験料(令和6年5月1日改定)
- 消防法第17条の5(工事・整備の業務独占)・第17条の6(甲種は工事+整備、乙種は整備)・第17条の14(着工届は工事10日前までに消防長又は消防署長へ)

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