結論: 乙5 の合否は「性質・消火10問」で決まる、消火の原則と例外が得点の核
危険物乙5 (危険物取扱者乙種第5類) の学習で最も重要なのは、性質・消火の10問です。乙4 など他の乙種を持つ免除受験者は、法令と物理学・化学が免除され、この性質・消火10問 (35分) だけで合否が決まります。第5類は自己反応性物質であり、その消火は乙4 (引火性液体) とは発想が正反対になります。
| 論点 | 第5類 (自己反応性物質) の要点 |
|---|---|
| 消火の原則 | 分子内に酸素を持つため窒息消火が効きにくく、大量の水・泡で冷却 |
| 最大の例外 | アジ化ナトリウムは加熱で禁水性の金属ナトリウムを生じ注水厳禁 |
| 燃焼の特徴 | 可燃物と酸素供給源が共存し燃焼が速い、量が多いと消火困難・爆発の危険 |
| 出題形式 | 性質・消火10問、合格ラインは6問 (60%) |
| 免除受験 | 乙種他類保有なら性質・消火10問・35分のみ、受験料5,300円 |
免除受験者にとっては、この10問が文字どおりの本丸です。代表物質の性状を分類ごとに整理し、消火の原則と例外を取り違えなく押さえれば、6問の合格ラインは独学でも安定して狙えます。本記事では、安全に直結する消火方法の例外を表で整理し、頻出の代表物質と取り違えポイントを得点源に変える順序を示します。
乙5 の試験概要・対象物質の全体像はこちらの入門記事で確認できます
この記事で分かること
- 第5類の消火の原則 (大量注水・冷却) と、注水厳禁となる例外物質
- 分類別の代表物質と性状 (色・状態・溶解性・危険因子) の整理軸
- 性質・消火10問で狙われやすい取り違えと、消去法で2択に絞る発想
- 免除受験者が6問の合格ラインを安定して越えるための学習順序
第5類の消火: 原則は「大量注水で冷却」、窒息消火は効きにくい
第5類の消火を理解する出発点は、なぜ窒息消火が効きにくいのかという点です。第5類危険物は分子の内部に酸素を抱えているため、外部から空気を遮断しても、物質自身が持つ酸素で燃焼が進みます。二酸化炭素や粉末消火剤で酸素を断つ窒息消火が通用しにくいのはこのためです。
| 消火方法 | 第5類での有効性 | 理由 |
|---|---|---|
| 窒息消火 (二酸化炭素・粉末) | 効きにくい | 分子内に酸素を持ち、酸素を断っても燃焼が継続する |
| 冷却消火 (大量の水・泡・強化液) | 原則として有効 | 温度を下げて分解・発火を抑え込む |
| 初期段階の対応 | 大量注水で分解の進行を抑える | 量が少ない初期なら消火できる場合がある |
| 火災が進行した段階 | 極めて困難 | 燃焼が速く、爆発に至ることもある |
第5類は可燃物と酸素供給源が同じ分子内に共存しているため、点火源が一つあれば火災や爆発を誘発しやすい危険物です。一般には大量の水が最も効果的とされ、泡消火剤も使えますが、危険物の量が多い火災では消火そのものが極めて困難になります。つまり「冷却が原則だが、量が多ければ消火は困難で予防が要」という二段構えで理解するのが正確です。
乙4 を学んだ人は「油火災に水は禁物」という発想が染みついているため、第5類では逆に大量注水で冷却するという原則を、学習の最初に上書きしておくことが失点防止につながります。
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注水厳禁の例外: アジ化ナトリウムは乾燥砂で覆う
ここが安全に直結する最重要ポイントです。第5類の消火は「大量注水で冷却」が原則ですが、すべての物質に当てはまるわけではありません。金属のアジ化物であるアジ化ナトリウムは、注水厳禁です。
| 物質 | 消火の扱い | 注水可否の理由 |
|---|---|---|
| 第5類の大半 (有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物 等) | 大量の水・泡で冷却 | 冷却して分解・発火を抑える |
| アジ化ナトリウム (金属のアジ化物) | 乾燥砂などで覆う、水・泡系は使わない | 加熱で禁水性の金属ナトリウムを生じるため |
アジ化ナトリウムは、火災で加熱されると熱分解して金属ナトリウムを生じます。金属ナトリウムは禁水性 (水と激しく反応する) であるため、ここに注水すると危険が増します。したがってアジ化ナトリウムの火災では、水や泡系の消火剤は使えず、乾燥砂などで覆う対応が基本になります。第5類の原則とは逆向きの例外であり、安全管理の観点でも試験の観点でも、ここだけは確実に区別しておく必要があります。
なお、アジ化ナトリウム自体は単体では爆発性が高いわけではありませんが、酸と反応すると有毒で爆発性のあるアジ化水素酸を生じ、重金属と作用すると鋭敏な金属アジ化物を生じます。取扱上の注意点としてあわせて押さえておくと、関連した出題にも対応しやすくなります。
| 例外・注意の論点 | 内容 |
|---|---|
| アジ化ナトリウムの消火 | 注水厳禁、乾燥砂などで覆う (金属ナトリウム生成のため) |
| ピクリン酸と金属 | 金属と反応して鋭敏な金属塩を生じるため、金属容器を避ける |
| 過酸化ベンゾイルの乾燥 | 乾燥すると爆発の危険が増すため、乾燥状態を避けて保管する |
| 共通の保管 | 加熱・衝撃・摩擦・直射日光を避け、密栓または所定の容器で冷暗所に保管 |
曖昧な一般化で「第5類はすべて水で消す」と覚えると、アジ化ナトリウムで判断を誤ります。原則 (大量注水) と例外 (アジ化ナトリウムは注水厳禁) はセットで記憶しておきましょう。
分類別の代表物質と性状を整理する
性質・消火で確実に得点するには、分類ごとに代表物質を固定し、性状を表で押さえるのが定石です。第5類は分類が多く名称も紛らわしいため、各分類につき代表物質を1〜2個に絞ると、覚える中心が15個前後に収まります。
| 分類 | 代表物質 | 性状の要点 |
|---|---|---|
| 有機過酸化物 | 過酸化ベンゾイル | 白色の固体、水に溶けない、乾燥すると爆発の危険が増す |
| 有機過酸化物 | メチルエチルケトンパーオキサイド | 無色の油状液体、布や鉄さびに触れると低温でも分解 |
| 硝酸エステル類 | ニトログリセリン | 無色の液体、水に溶けにくく有機溶媒に溶ける、凍結すると感度が上がる |
| 硝酸エステル類 | ニトロセルロース | 綿状・繊維状の固体、窒素量が多いほど危険、乾燥を避ける |
| ニトロ化合物 | ピクリン酸 | 黄色の結晶、金属と反応し鋭敏な金属塩を生じる、乾燥で危険増 |
| ニトロ化合物 | トリニトロトルエン (TNT) | 淡黄色の結晶、水に溶けない、日光で変色、加熱・打撃で爆発 |
| アゾ化合物 | アゾビスイソブチロニトリル | 加熱で窒素ガスを放出、重合開始剤・発泡剤に利用 |
| ジアゾ化合物 | ジアゾジニトロフェノール | 衝撃・摩擦に敏感、起爆薬に利用 |
| 金属のアジ化物 | アジ化ナトリウム | 無色の結晶、注水厳禁、酸でアジ化水素酸を生じる |
| ヒドロキシルアミン等 | ヒドロキシルアミン | 白色の結晶、水・アルコールによく溶ける、潮解性がある |
性状を覚えるときは、色 (無色・白色・黄色など)・状態 (固体か液体か)・水への溶け方をひと組で記憶すると、選択肢の正誤判定が速くなります。とくに「液体である物質」(ニトログリセリン、メチルエチルケトンパーオキサイドなど) は少数派なので、固体が多いなかで液体のものを際立たせて覚えると効率的です。
溶解性は得点源にも失点源にもなる
第5類の性状のなかでも、溶解性は出題頻度が高く、覚え方次第で得点源にも失点源にもなります。物質ごとに整理しておきましょう。
| 溶解性のタイプ | 該当しやすい代表物質 |
|---|---|
| 水によく溶ける | ヒドロキシルアミン、アジ化ナトリウム |
| 水に溶けにくい・溶けない | 過酸化ベンゾイル、トリニトロトルエン、ニトログリセリン |
| 有機溶媒・アルコールに溶ける | ニトログリセリン、ヒドロキシルアミン |
溶解性は「なんとなく」で覚えると本番で迷います。水に溶けるものを少数として先に覚え、残りを「水に溶けにくい」と整理すると、記憶の負荷が下がります。表で機械的に対比し、別名や用途とあわせて記憶するのが定着のコツです。
性質・消火10問で狙われる取り違えを潰す
第5類は名称が紛らわしく、分類の取り違えが出題の定番です。狙われやすいパターンを先に知っておくと、ひっかけを見抜けます。
| 取り違えパターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 「ニトロ」と付くから全部ニトロ化合物 | ニトログリセリン・ニトロセルロースは硝酸エステル類 (ニトロ化合物ではない) |
| アゾ化合物とジアゾ化合物の混同 | 別分類、代表物質と用途で区別する |
| 第5類はすべて水で消火できる | アジ化ナトリウムは注水厳禁 (例外) |
| 第5類はすべて固体 | ニトログリセリンなど液体の物質もある |
| 窒息消火が一般に有効 | 分子内に酸素を持つため窒息消火は効きにくい |
これらは「知っていれば取れるが、知らないと落とす」典型です。とくに「ニトロと付くのにニトロ化合物ではない」物質と、消火の例外 (アジ化ナトリウム) は、出題者が好む論点です。表で対比して覚え、選択肢を消去法で2択まで絞れる状態を全分類で作っておけば、10問中6問の合格ラインは安定します。
科目免除を含む乙5 の合格率・難易度の詳細はこちらで整理しています
受験タイプ別: 学習の組み立て方
性質・消火の重みは、免除受験か新規受験かで変わります。自分の立場に合わせて学習を組み立てましょう。
免除受験者: 性質・消火に全集中する
乙4 など他の乙種を持つ免除受験者は、性質・消火10問だけを35分で解く形になります。学習を性質・消火に全集中できるので、進め方をシンプルに組み立てられます。機械的な連番ではなく、定着の順序として読んでください。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 消火の方向性を上書き | 「窒息消火は効きにくく大量注水で冷却」を乙4 と対比して頭に入れる |
| 例外を先に固定 | アジ化ナトリウムは注水厳禁、という安全上の例外を最初に覚える |
| 分類と代表物質を固定 | 各分類で代表物質を1〜2個に絞り、覚える中心を15個前後にする |
| 性状を表で整理 | 色・状態・溶解性・危険因子を物質ごとに表で固める |
| 取り違えを潰す | 紛らわしい名称・分類を対比して、消去法で絞れる状態にする |
| 演習で仕上げる | オリジナル予想問題・練習問題で頻出論点を反復し穴を埋める |
免除受験は突破すべきハードルが性質・消火の1科目だけに絞られるため、対策範囲が狭く、暗記中心で進められます。動画講座で理解を補うより、自分で物質を分類して書き出すほうが定着しやすい領域です。教材は最新版を1冊用意し、表を自作しながら覚えるのが近道です。
新規受験者: 性質・消火は3科目の一つ
乙5 から初めて受験する場合は、法令15問・物理学および化学10問・性質消火10問の3科目すべてを仕上げる必要があります。各科目60%以上の三重基準があり、1科目でも60%を割ると不合格です。
| 科目 | 出題数 | 合格基準 |
|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 9問以上 (60%) |
| 基礎的な物理学および基礎的な化学 | 10問 | 6問以上 (60%) |
| 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法 | 10問 | 6問以上 (60%) |
| 合計 | 35問 | 三重基準 (各60%) |
新規受験者にとっても、性質・消火はこの3科目の一つとして確実に取りにいくべき領域です。法令と物理化学は乙4 と共通の土台なので、第5類固有の知識は本記事で扱う性質・消火に集約されます。乙4 をこれから受ける、または同時並行で学ぶ人は、共通科目の土台を固めてから第5類物質に進むと効率的です。
性質・消火攻略のチェックリスト
学習の仕上げに、自分の理解度を確認しましょう。
- 第5類は分子内に酸素を持ち、窒息消火が効きにくいと理解した
- 消火の原則は大量の水・泡で冷却することを、乙4 と対比して上書きした
- アジ化ナトリウムは注水厳禁 (乾燥砂で覆う) という例外を確実に覚えた
- 各分類の代表物質を1〜2個に絞り、覚える中心を15個前後にした
- 物質ごとの色・状態・溶解性・危険因子を表で整理した
- 「ニトロと付くが硝酸エステル類」の物質を区別できる
- アゾ化合物とジアゾ化合物を取り違えない
- 溶解性 (水・アルコール・有機溶剤) を物質ごとに固めた
- 10問中6問の合格ラインを意識し、消去法で2択に絞れる状態を作った
これらが埋まれば、免除受験の性質・消火10問は十分に射程に入ります。新規受験者は、これに加えて法令と物理化学の土台を固めてください。
まとめ: 消火の原則と例外を制すれば、乙5 の本丸は越えられる
危険物乙5 の本丸は性質・消火10問であり、免除受験者はここだけで合否が決まります。第5類は自己反応性物質で、分子内に酸素を持つため窒息消火が効きにくく、大量の水・泡で冷却するのが原則です。ただしアジ化ナトリウムは加熱で禁水性の金属ナトリウムを生じるため注水厳禁という、安全上の重要な例外があります。
要点を確認しましょう。
- 消火の原則: 窒息消火は効きにくく、大量の水・泡で冷却する
- 最大の例外: アジ化ナトリウムは注水厳禁、乾燥砂などで覆う
- 代表物質: 各分類で1〜2個に絞り、色・状態・溶解性・危険因子を表で整理
- 頻出の取り違え: 「ニトロと付くが硝酸エステル類」、アゾとジアゾの混同
- 合格ライン: 10問中6問、消去法で2択に絞れる状態を全分類で作る
消火の原則と例外、代表物質の性状、紛らわしい分類の対比という3点を表で固めれば、性質・消火10問は安定して6問を越えられます。試験の全体像は乙5 とは何かの入門記事、合格率の二層構造は難易度の整理記事、学習法の選択は独学か講座かの判断記事で確認してください。
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出典
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 危険物取扱者試験の試験科目・問題数・合格基準・科目免除制度・受験料
- 消防法、消防法施行令、消防法施行規則 — 第5類危険物 (自己反応性物質) の分類・指定数量・貯蔵取扱の基準
- 各物質の安全データシート (SDS) および公的機関の危険物データ — 代表物質の性状・消火方法・取扱上の注意







































































































